草原の鳥の移動能力はパッチ間距離より大きい(2009.06.29)
古典的なメタ個体群は、生息不適地によって分断されているが分散によって結びついている個体群の集合である(Levins 1969)。その後もいくつかのメタ個体群モデルが提案されている。メタ個体群のタイプが違えば異なる管理戦略が必要である。ボボリンク(Dolichonyx oryzivorus)[ムクドリモドキ科]は、北米の小鳥類の中でももっとも長距離の渡りをする種の一つで、南米で越冬する。渡りの時と越冬地では群れになるが、繁殖期には雄はなわばりを持つ。繁殖分布域全体で個体群は減少している。米国のプレイリーの88-99%が農地に転換され、さらに、その農地でも、採草頻度や放牧密度の増加により好適な生息地が減少している。長期的な地域個体群の動向を評価し、適切な管理を決めるためには、ボボリンクのメタ個体群についてよりよい理解が必要である。米国中西部の農業地帯において、採草地や放牧地に生息するボボリンクの分散距離と絶滅リスクを調べて、メタ個体群タイプを明らかにすることを目的とした。
2001-2004年の5月から7月にインディアナ州中央西部のWarren郡(945 km2)にある個人所有の採草地と牛の放牧地でボボリンクを調べた。もっとも近い生息地は19 km東に離れている。一続きの隣接した採草地または放牧地を生息地パッチと定義した。一つの生息地パッチを占める個体は独立した個体群であるという初期仮定を置くと、7.8-58.7 haの6つの生息地パッチを占める6つの個体群が認められた。パッチ間の平均距離は9.3kmだった(2.3-17.8km)。ボボリンクをかすみ網で捕獲し、金属番号リングとカラーリングを装着した。各生息地パッチでは、週に1回標識個体を探索した。観察結果はMARKプログラム(Ver. 4.1)を使って分析し、生存率や再捕獲・移動確率を推定した。雌は十分なサンプルが得られなかった(標識58、再捕0)ので、雄だけを分析に用いた。6つの候補モデルを構築し、モデル間の妥当性はAICcを用いて比較した。
143雄を標識し、105雄(73%)を少なくとも1回再確認した。30雄(21%)は次の繁殖シーズンに再捕され、うち24雄は同じパッチで再捕された。10雄は標識地点から最大14.2kmまで(平均7.3km)移動した。この値は、パッチ間距離の最大値17.8km、平均値9.3kmよりも小さかったが、統計的な違いはなかった。成鳥雄の生存率は0.57-0.90、再捕獲率は0.21-0.56、シーズン内に別のパッチへ移る率は0.24であった。調査期間中に1つの局所個体群が絶滅した。そこは、2001年には採草地であり、営巣地として使われたが、2002年と2003年には牛が周年放牧されて草丈が短くなりすぎ、2004年には畑作地に変換された。
高い分散率と生存率、低い再捕獲率は、分散が頻繁であり、空間的に分かれている個体のグループは、単一の個体群として機能していることを示唆している。局所絶滅は稀でも個体の完全な入れ替わりは起こりうる。この研究でも標識個体の17%しか翌年に同じパッチに戻らなかったことから、かなりの入れ替わりが起こっている。ボボリンクは発見の容易な鳥なので、かなりの雄が永久に元のパッチを去り、別のメタ個体群から移入が起こっているものと推測される。ボボリンクがどの程度の分断化までなら打ち勝てるのかは未知である。安定同位体や遺伝的な技術が役に立つかもしれない。たぶんもっと重要なことは、好適な植生構造を維持しつつ広範囲に及ぶ営巣失敗を防ぐようにかく乱の頻度とタイミングを調整することであろう。
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カリフォルニアでの稲作増加はマガンにはありがたい(2008.12.02;2008.12.22)
カリフォルニア州のセントラルバレーでは90%の湿地が農地開発や都市拡大のために失われたが、現在でも太平洋渡りルートの60%、北米の20%の水鳥に越冬地を提供している。この10年で稲作と冬期湛水水田が増え、湿地の回復も進められてきた。我々はこうした大きな変化の起こる前と起こった後でマガン(Anser albifrons)の越冬生態を比較した。特に、発信機を使ってねぐらと餌場の往復や空間分布を調べた。
繁殖地やカリフォルニア州北部で航空機を使った追い込み網やロケットネットによりマガンを捕獲し、成鳥雌に発信機を装着した。11月1日から3月15日までトラックで毎日、また、4月15日まで飛行機で月に1回マガンの位置を測定した。環境は湿地、丘陵地(Upland)、水田、その他農地の4種類に分けて現地で記録した。マガンの特性と環境との関係についてはAICに基づくモデル選択により分析した。発信機による位置データについては分析対象に応じて自己相関が生じないように利用データを制限した。
1987-1990年に100羽、1998-2000年に192羽の成鳥雌に発信機を付け、合計4,516地点の位置データを得た。十分な説明力を持つモデルは得られなかったものの、ねぐらと採食地の距離には時代(87-90年か98-00年か)がもっとも大きな影響を与え、87-90年の平均32.5kmから98-00年の24.2kmへと短くなった。個体群全体の行動範囲については月だけを説明変数とするモデルがもっとも説明力があったが、時代による違いも大きく、個体数が2.2倍に増えたにもかかわらず87-90年の5,145km2から98-00年の3,367km2へと狭くなった。ねぐらについても採食地についても、マガンは4つの環境カテゴリーのうち水田をもっともよく利用し、その率は高まっていた。マガンはここ10年における稲作や冬期湛水の増加から恩恵を受けていると考えられる。しかし、水需要は逼迫しており、現在の冬期湛水は必ずしも持続的ではないので、今後も自然湿地の回復努力を続けるべきである。
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長く水田として使われると水鳥の餌が減る(2008.12.01;2008.12.22)
耕作地は世界の陸地の30%を占める。多くの動物種にとって農業生態系は生活していかなければならない最後の生息地であり、彼らが農業生態系においてどのように資源を利用しているかを理解することは重要である。世界の多くの地域で自然湿地は水田に置き換えられ、水鳥にとって代替生息地となっている。ローヌ川の河口デルタであるカマルグ(Camargue)はヨーロッパでもっとも重要な水鳥生息地の一つである。ここの水田は播種直前の4月下旬から5月上旬に湛水されるが、「湛水直播」では播種に先立って水が張られ、「乾田直播」では乾いた状態で播種された後、24時間以内に湛水される。この研究は、こうした農法と水鳥の関係を理解しようとした初めての仕事である。
1997年の4月7日から6月8日まで46の水田(計93.95ha)において4日間隔で水鳥を数えた。各水田について、水田としての使用歴(4年以上、2-3年、初年)と播種方法、水深を記録し、水鳥個体数を目的変数として一般化線形モデルにより分析した。調査中に2,479羽の鳥が記録され、うち2,090羽は昆虫食、350羽は植物食、39羽が魚・両生類食の鳥だった。カモメ類やシギチドリ類(17種)が全体の73%を占め、サギ類(8種)が6.5%、カモ類(2種)が15.5%を占めた。水鳥は新しく水田になったばかりのところで2-3年または4年以上水田だったところよりも多かった。昆虫食の鳥(カモメ類・シギチドリ類)については水田になってからの年数、サギ類には水深、植物食の鳥には播種方法が効いていた。
水田では春に水が張られるとミミズが水面に出てくるとともにユスリカや水棲ミミズの発生が促され、カモメやシギチドリが引き寄せられる。しかし、繰り返し耕起されたり殺虫剤をまかれてきた水田ではこうした無脊椎動物が少なく、昆虫食の水鳥にとって魅力が減ったのかもしれない。植物食であるカモが「湛水直播」で多かったのは、夜間に種子を水といっしょにこし取るという採餌方法に有利だからであろう。
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バルト3国では農地の構造が複雑なほど鳥は多い(2008.09.08;2008.12.22)
中東部ヨーロッパのバルト3国(エストニア・ラトビア・リトアニア)では1990年代の共産主義体制崩壊で急速に農業生産が低下したが、その後ゆっくり回復しつつある。[2004年5月の]EU加盟は農業集約化による生物相の破壊につながるかもしれないが、農業環境プログラムによって野生生物をサポートするチャンスでもある。この研究の目的は、農地構造の鳥類群集への影響を解析し、最適な農業環境計画の立案に必要な情報を提供することである。
バルト3国は、森の多い北端のエストニア(農地19.7%)からより開けた南端のリトアニア(農地53.4%)まで南北約700kmに横たわっている。国ごとに選んだ100km2の調査地内で1km2のグリッドを25-51個ランダムに選び、各グリッド内の4地点で2002年の春から夏に距離を制限しない5分間のポイントセンサスを2回ずつ実施した。環境については、各地点で半径100m以内の作物種別の面積や耕作地以外の環境要素、農地以外の主要な環境(林や住宅地)までの最短距離[=エッジまでの距離]などを求めた。農地構造、耕作地以外の環境要素、景観タイプのそれぞれに関わる変数セットを使って3つの一般化線形モデルを構築した。
耕作地内を利用する鳥(true field species)の個体数はエッジまでの距離および農地タイプの多様性と正の相関があった。エッジの鳥(edge spp.)と農家の鳥(farmyard spp.)、森の鳥(forest spp.)はいずれも農地タイプの多様性および耕作地以外の環境要素の量と正の相関があった。保全上関心の高い減少している農地性の鳥にとっては多年生草原と畑が隣接していることがもっとも重要な組み合わせであった。全体的に鳥の種数と個体数には100km2スケールでの景観タイプよりも局所的な農地の構造の方が効いていた。耕作地以外の環境要素の中では、理由は不明だが、水路が特に鍵となる環境であった。本研究の結果は、景観ないしは圃場スケールでの環境の不均一性と種数が正の相関を示すという従来の研究成果と一致している。今後農業の集約化が予想される中で、いろいろな作物を作り、非耕作環境要素を残す農家を支援すべきなのかもしれない。ただ、農地構造の不均一性(farmland structural heterogeneity)と農地管理の低い集約性(low intensity of farmland management)のどちらがどれほど重要かという問題はまだ未解明である。
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2) Herzon, I;Aunin?, A;Elts, J;Preik?a, Z (2008) Intensity of agricultural land-use and farmland birds in the Baltic States. Agric. Ecosys. Environ. 125:93-100 [#21337]
3) Amano, T;Kusumoto, Y;Tokuoka, Y;Yamada, SU;Kim, E-Y;Yamamoto, S (2008) Spatial and temporal variations in the use of rice-paddy dominated landscapes by birds in Japan. Biol. Conserv. 141:1704-1716 [#21290]
◆田んぼのハクガンは自然湿地のハクガンより楽している(2007.04.12)
北米のハクガン(Chen c. caerulescens)はかつてはルイジアナ州の沿岸湿地で越冬していたが、1960年代終盤から内陸の水田を利用し始めるようになった。両者の間は30kmほど離れており、ハクガンは沿岸湿地では主に湿性植物の根茎部を食べているが、水田ではイネや雑草の地上部を食べている。ハクガンの生息地はこれからも沿岸湿地の消失や米生産面積の変動によって変化するので、両生息地の価値を評価しておくことは重要である。
2002-2003年と2003-2004年の冬に1個体当たり5-10分の観察を繰り返し、沿岸湿地で延べ244個体(成鳥212、幼鳥32)、水田で703個体(成鳥537、幼鳥166)についてタイムバジェットのデータを得た。さらに、文献情報から得た行動ごとのエネルギーコストや湿地と水田でのエネルギー獲得率からエネルギーバジェットを求めた。その結果、湿地の成鳥は水田の成鳥よりも多くの時間を採食に充て、非活動的な時間(休息など)が少なかった。幼鳥については逆に湿地で水田よりも非活動的な時間が多かった。水田では、成鳥は幼鳥よりも警戒が多くて採食時間が少なかった。湿地では、成鳥は幼鳥よりも非活動的な時間が少なかった。エネルギー収支については生息地の違いだけが効いており、水田のハクガンの方が湿地のハクガンよりも多くの優れた収支を示した。
水田の餌は湿地の根茎類よりも水分含量が多いが、そのことは採食効率の制限要因になっていないようである。ガン類が農地を使うのは必ずしも自然生息地が破壊されたせいではなく、農地でより効率よく餌を得ている。この結果は、ハクガンの個体数が水田ではこの20年間で増加してきているが自然湿地では安定していることとも一致している。年齢の効果については、水田では予想通り採食効率の悪い幼鳥の方が成鳥よりも多くの時間を採食に費やしたが、湿地ではそのような傾向はなかった。これは、湿地ではサンプル数が少なかったためかもしれない。
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◆広い田んぼと谷津田のどっちが鳥の保全に大事?(2005.03.24)
水田が水鳥の大事な生息環境であることは、ヨーロッパや北米でも認識されている。日本では、広い平坦地だけでなく小河川沿いにも水田がある。同じ水田でも、その幅や周辺環境によって鳥の生息地としての機能に違いがあるかもしれない。
霞ヶ浦南岸にある71地点の水田で5~7月に鳥のセンサスを6回実施した。水田を幅によって<50m(21地点)、50-100m(18地点)、100-300m(15地点)、>300m(17地点)に分け、>300mの地点については縁から100m以内(8地点)か以遠(9地点)かでさらに分けた。草地の鳥は縁沿いよりも中心部に多かった。個別の種では、ヒバリ、セッカ、ハシボソガラスが中心部に多く、ゴイサギは逆に縁に多かった。幅については、シラサギ類は狭い水田で少なく、さらにシギチドリ類は幅300m未満の水田にはほとんど入らなかった。逆に、ゴイサギは狭い水田で多く、セグロセキレイやホオジロは幅の広い水田には出現しなかった。
サギ類やシギチドリ類といった水田を代表する鳥は幅の狭い水田にあまり入らないため、全体として平坦地に広がる水田の方が多くの種に利用されていた。ただ、狭い水田を好む種もいる。いずれにしても、鳥類の保全では水田の幅や周辺環境からの距離を考慮することが必要である。
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◆イギリスにおける農地の鳥の減少原因と保全策の効果(2005.02.22)
イギリスやヨーロッパでは、農業集約化のために減少した農地の鳥の保全が重要な課題となっている。この総説では農業集約化と個体数減少の因果関係や保全策の効果について、調査資料や文献情報を整理する。
農業集約化(agricultural intensification)は単一のプロセスではなく、次のような多数のコンポーネントから成り、それぞれが別々の鳥に影響しうる。(1)殺虫剤・除草剤使用の増加、(2)生け垣などの非耕作地の減少、(3)春耕から穀類収穫直後の秋耕への変化、(4)排水、(5)混合農業から単一農業への変化、(6)収穫時期の早期化、(7)化学肥料や頻繁な再播種による草地管理の集約化、(8)家畜(特に羊)の飼育密度増加。
データが揃っている繁殖種30種について検討したところ、主要な減少要因は、除草剤、穀物収穫直後の秋耕、排水、家畜密度の増加であった。これらは、もっぱら生息地と餌の減少によって鳥の減少を招いている。農業環境事業(agri-environmental scheme)や地域的な保全策で効果があがっている例はあるが、国レベルで増加に転じているのは3種のみ(有機塩素系農薬による激減から回復しつつある猛禽類を除く)。成功した事業には、特定の対象種についてのものが多く、複数種を対象としたり多様性向上を目指した事業でははっきりした結果が出せていない。
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◆新しい綿花栽培法は虫にも鳥にも農家にも好ましい(2005.02.08)
米国では、農業集約化と森林への移行によって遷移初期環境を好む鳥が減っている。そんな中で、除草剤や殺虫剤、化学肥料を多用し、頻繁に表土を耕し、しかもしばしば連作されるため、鳥にとっては最悪の環境といわれている綿花栽培が復活しつつある。
米国南東部のジョージア州で、「慣行農法」の4圃場、少なくとも30%の作物残渣を表面に残して耕起の回数も減らす「保全農法」6圃場、保全農法に加えて綿花の列の間にクローバを植える「クローバ農法」5圃場において、鳥と節足動物を2年間調査した。慣行農法では鳥がほとんど記録されず、密度を推定するだけのデータが得られた場合、鳥の密度は保全農法やクローバ農法で慣行農法の何倍も(several times)高かった。渡り時期と繁殖期には、保全農法よりクローバ農法で鳥の密度が高かった。また、夏の節足動物量もクローバ農法で他よりも多かった。
クローバ農法と保全農法は、耕起や施肥のコストを下げるという農家にとってのメリットもある。収量も慣行農法よりもむしろ多いこともあるので、野生生物にも農家にもよい選択といえる。
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◆デンマークの農地の鳥は、イギリスのようには減っていない(2005.02.01)
イギリスでは20世紀最後の数十年で多くの農地の鳥が減少した。その原因として、殺虫剤・化学肥料の使用量増加や春まき穀物から秋まき穀物への転換といった農業近代化が挙げられている。同様の現象は、ヨーロッパでも農業近代化が進んでいる他の国で起こっている。デンマークでも農業近代化が進み、1970年~2002年の間に農場数は14万から5万に減少する一方で、平均農場サイズは21haから51haに増加した。では、農地の鳥は減ったのだろうか。
1983年~2001年について、26の農業関係データと27種の鳥のデータを分析した。春まき麦から秋まき麦への転換やアブラナの導入、飼料用ビートの減少、草地の減少、家畜頭数の増加、といった農業近代化の傾向はイギリスと同様であった。ただし、農薬の使用量だけは減少傾向にあった【ちなみに2000年現在で6%の農地が有機栽培】。鳥類27種中、減少したのは、イギリスでの15種に対してデンマークでは5種にすぎず、イギリスでは深刻な減少が報告されているヒバリなどの種子食性の鳥も含めて、デンマークでは農地の鳥の多くが安定しているか増加していた。さらに、年をサンプルとして、農業データと鳥のデータをそれぞれ主成分分析し、その第1成分間の相関をみたところ、農業は1990年以降も変化しているのに、鳥は変化していないことが分かった。
イギリスと違う結果が出た原因としては、デンマークでは圃場の周辺に生け垣や湿地、薪炭林などが比較的多いことや、農薬と化学肥料の使用量が減っていることが鳥にとって幸いしているのかもしれない。
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◆ミシシッピー州にある冬の水田にはガンカモ類の餌が豊富か?(2005.01.28)
アーカンソー州とミシシッピー州にまたがるミシシッピー沖積低地は、かつては冬と春にしばしば水浸しになる湿性森林だったが、すでにその79%が主に農業のために開墾された。この地域では、全米の約半分に相当する61.3万haでイネが収穫され、うち6.6万haでは冬鳥のために水が貯められている。この研究では、冬の湛水やその期間、収穫後の耕起が冬鳥の餌量に与える影響を実験によって調べた。
収穫後に耕起するかしないかの2通り、湛水を狩猟シーズン終了の1月20日までか(短期)、3月1日までか(長期)、あるいは湛水しないの3通りの処理を、6地域の水田に2冬設定した(計6処理×6地域×2冬=72枚の水田)。平均18.5haの水田内で0.75haに1ヵ所の割合で深さ10cmまでの土壌を4回採取し、鳥の餌を取り出した。その結果、収穫直後には落ち籾が490kg/haと大量にあるものの、雨水が貯まる12月までに、最初の冬で79-93%、次の冬で96-99%が消失した。冬の落ち籾量は、耕起した無湛水の水田で他より多く残っていた(最初の冬のみ)。雑草も耕起した無湛水の水田で他より多く(2冬目のみ)、雑草種子と無脊椎動物には処理間で差はなかった。
ということで、ほとんどの落ち籾が秋の間に失われてしまい、冬期湛水によって他の餌が増える傾向もなかったことから、冬鳥のための冬期湛水は、餌の供給という点では期待通りの効果は挙げていないと考えられる。秋に落ち籾が消失する原因はいろいろあるが、近年、収穫期が早くまり、冬鳥の渡来までに発芽して劣化したり、鳥獣類に食べられたりしている可能性がある。
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◆オランダでの農業環境事業は鳥や植物の保全に効果なし(2005.01.25)
EU加盟15カ国だけで1992年~2003年の間に約240億ユーロ(3.2兆円)が農業環境事業に投じられてきた。しかし、多くの国では小規模な保全策がさまざまな景観(landscape)で実施されてきたこともあり、その効果についての生態学的なデータは乏しい。この研究では、オランダで実施されてきた「牧草地の鳥協定」(meadow-bird agreements)と「植物協定」(botanical agreements)という2つのカテゴリーの施策の効果を検証した。これらの協定では、排水システムの変更禁止や肥料・除草剤などの使用制限が課せられる。なお、これらの協定を結べるのは、比較的自然の豊かな地域の農家だけである。
オランダ中の9地域から協定を結んでいる圃場と、その近くで協定を結んでいない圃場をセットにして39組(78圃場)選んで、各圃場(平均2.0ha)とその周辺12.5haで鳥と植物、訪花昆虫(ハチとハナアブ)を調べるともに、施肥量などについて農家にアンケートした。その結果、施肥量は協定農地で確かに大きく減っていたものの、対象種群である鳥と植物については、協定農地と非協定農地の間で差がなかった。もっとも重要な対象種群であるシギ・チドリ類については、圃場レベルでは協定農地をむしろ避けていた。鳥協定農地について、開始からの年数による効果の向上を調べたところ、それもなかった。一方、訪花昆虫の種数と数は、協定農地で非協定農地よりも有意に多かった。
鳥については、牧草の刈り取りを巣立ちが終わる時期まで遅らせるといった保全策には鳥が反応せず、むしろ施肥量の減少によって主要な餌であるミミズが減ったことが鳥の減少を招いた可能性がある。さらに、ここ数十年で進んだ地下水位制御システムなどの農業基盤整備による影響は、圃場単位の施策だけでは解決しないほど大きいのかもしれない。
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