◆サンショウウオは過去の経験に基づいて移動する?[豊田大輔](2008.02.14)
分断されたランドスケープにおける両生類の持続性は、局所的な絶滅後に他の局所個体群から再定着する能力に依存する。再定着には、個体が生息地の縁を横切って分散することが必要である。本研究の目的は、森林性のサンショウウオの一種(Ambystoma maculatum、以下サンショウウオ)について、連続的に広がる森林の中に位置する「森林池」と、森林と草地の明瞭な境界部にある「境界池」における移動分散パターンと境界部の通過性を明らかにすることである。
森林池はオークの優占する広葉樹林に完全に囲まれている。境界池は、西側には森林池と同じような森林が、東側には草地が広がっている。二つの池は約3km離れており、大きさはほぼ同じである。池の周りをカエルの移動を妨げるフェンスによって囲み、さらに長さ15mのフェンスを2枚、境界部と平行に設置し、4.5m間隔に落下式トラップを設けた。2001年3月から2002年6月まで1~3日間隔でトラップを見回り、捕獲した個体は指を切って個体識別した。ラジオテレメトリー法による追跡調査は成体を対象とし、発信機(1.8g、体重の約1割)を肋骨のあたりに埋め込んだ。森林池では19個体のうち7個体を元の場所で放し、池の東側で捕獲された12個体を境界池へ移した。境界池では20個体のうち9個体を元の場所へ戻し、池の西側で捕獲された11個体を森林池で放した。
境界池において、成体は、森林側から池に移動してきて同じ方向に戻っていった。草地側から森林側に方向を変えた幼体は、森林側から草地側に方向を変えた幼体よりも有意に多かった。発信機による追跡では、森林池から人為的に移された個体(置き換え個体)と元いたところに放された個体(対照個体)のいずれも草地内に数m以上入ることはなかった。対照個体は最終的にはすべて森林に入った。置き換え個体では、池と反対方向(東側)に移動し、境界に達すると少しバックしてから境界沿いに移動する個体や池のほうに戻る個体がいたが、森林へ移動した個体はいなかった。森林池においては、置き換え個体と対照個体の移動に差はなかった。
今回の結果から、サンショウウオは、移動しながら草地を察知して避けている可能性や過去の経験にもとづいて移動している可能性が考えられる。いずれにしても分断化された生息地でサンショウウオが高い死亡率をこうむるリスクを減らしているが、長期的には境界をまたいで再定着できるかどうかを理解することが保全上大切である。
【藤岡コメント:3ヵ月間の追跡中、発信機装着個体計39個体のうち17個体が捕食の形跡もなく死体で見つかっているので、発信機はサンショウウオに相当な悪影響を及ぼすようだ。】
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◆ビーバーのダムはカエルの産卵場所[豊田大輔](2008.02.14)
多くの両生類は姿を見つけにくく、特に北方では繁殖期間が短いことなどから、野外調査で個体数を正確に推定することは困難である。そこで、指標となる代替種(surrogate species種)を用いることが有効かもしれない。カエル類は流れのある区間よりもビーバー(Castor canadensis)の作った池で豊富であることが報告されている。本研究では、ビーバー池がある区間とない区間において、カエル類3種、アカガエルの一種(Rana sylvatica、以下アカガエル)、アマガエルの一種(Pseudacris maculata)、ヒキガエルの一種(Bufo boreas)の豊富さと繁殖行動を比較した。また、GISを使ってデジタル標高値(DEM, digital elevation model)と植生からビーバー池の出現パターンを予測した。
カナダのアルバータ州西部を流れる2本の河川流域を対象地域とした。ビーバーが池を作っている河川区間(長さ平均190m、ビーバー池1-6個)を15区間ランダムに選び、そのうち9区間については対となるビーバーのいない河川区間(長さ200m、以下流水河川)を近くに選んだ。5月上旬から6月上旬に、2001年は5回、2002年は6回の鳴き声調査から産卵に訪れるカエル類の個体数を推定し、2001年の夏にはフェンスと落下式トラップによって幼体と成体を捕獲し、努力量当りの捕獲数を算出したた。また、GISを用いて流水区間周辺のビーバー池の占める割合とビーバー池までの距離を計測した。その結果、流水河川ではカエル類の鳴き声は確認されず、ビーバー池でのみ鳴き声が確認された。落下式トラップで捕獲されたカエル類幼体の個体数は、3種とも流水河川に比べてビーバー池で有意に多かった。流水河川におけるアカガエル幼体の捕獲数は、周辺500mまたは1,000mの範囲に占めるビーバー池の割合と正の相関があった。
カエル調査とは別に、15の集水域、計14,548haを対象地域としてランダムに抽出した573地点について、ビーバー池の有無を目的変数とし、地形(標高、傾斜、河川次数)、植生(落葉広葉樹・ポプラ類の割合)、伐採地や道路からの距離などを説明変数として、罰則付き擬似尤度を用いて一般化線形混合モデルを構築した。573地点のうち114地点がビーバー池を含み、ビーバー池の出現は、標高および河川次数と正の相関があった。河川勾配と河川次数の間には有意な交互作用があり、ビーバー池は急勾配で河川次数が小さい(1から2)場所か、緩勾配で河川次数の大きい(3から4)場所で出現確率が高かった。また伐採地からの距離が近い場所では、餌となるポプラの割合に関わらず、ビーバー池は出現しにくかった。
ビーバー池はカエル類の生息地を提供しており、その分布はリモートセンシングによって把握できることから、カエル類の生息場所を広域において評価する指標種としてビーバーが有用であることが示唆された。
【藤岡コメント:ビーバー池が出現すると池で産卵するタイプが増えるのは当然だが、流水性のカエルにとっては生息地が減ることになるのでは? おもしろい研究だが、2つの論文に分けてほしい内容だ。】
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◆カエル類では陸に上がった後でも密度効果が作用する[豊田大輔](2008.02.01)
複雑な生活環を持つ生物では、個体数の調節(密度効果)は単一あるいは複数の段階で作用するかもしれない。カエル類においては、幼生期における密度効果は多くの研究で証明されているが、それが変態後の個体数に影響するかどうかはほとんど検証されていない。さらに、陸上での個体数密度を扱った研究は稀で、特に成体の密度効果については未知である。本研究では、2種のカエルについて幼体の密度を変えて1年間にわたって飼育し、密度が生存率、成長率、性成熟に与える影響を明らかにした。
野外から採集してきたアメリカアカガエル(wood frog Rana sylvatica、以下アカガエル)の卵塊とアメリカヒキガエル(American toad Bufo americanus、以下ヒキガエル)の幼生を大型タンクで飼育し、片方もしくは両方の前肢が形成された時点でタンクから取り出して個体識別のための指切りを施した上で実験に供した。カエル類を入れる囲いは、金属板で底面積1×2m、高さ60cmになるように作り、ナイロンネットを被せた。避難場所として中央に穴を掘って落ち葉を入れた。約1kgの落ち葉を春と晩秋に加え、植物は生えるままとし、餌は加えなかった。幼体の密度を1~10個体/m2の間で6段階設定し、繰り返しを6-10回、計48回とした。アカガエルを用いた実験は2004年5月から1年間、ヒキガエルの実験は2005年6月から1年間行った。3週間おきに囲い内のカエル類を捕獲し、頭胴長を計測した。最後の捕獲時には頭胴長と体重の測定を行い、アカガエルついては安楽死させてから解剖し、性成熟度を判定した。ヒキガエルについては最小成熟サイズ(50mm)以上の個体を成熟個体とした。
実験の結果、アカガエルとヒキガエルの両方の生存、成長、性成熟はいずれも初期密度に大きく影響された。初期密度が密度が高いほど生存率は低くなり、初期密度と実験終了時の密度の関係はシータ・ロジスティック成長モデル[y = x - (x2/aθ)]にもっともよく適合した(ただしヒキガエルでは有意でなかった)。成長には、高密度と低密度の間でアカガエルは約2倍、ヒキガエルは約3倍の差があった。アカガエル♀の性成熟度は処理間で有意な差があり、さらに、アカガエル♂とヒキガエルの成熟個体は低密度(1~3個体/m2)においてのみ見られた。
本研究で確認された密度効果が自然状態での個体群にどれほど影響するかは、自然状態での密度次第である。情報が乏しく、かつ非常にバラツキが大きいが、本研究の設定は自然状態で見られる範囲内と思われる。両生類において陸上の密度が個体群を制限する可能性があり、陸上の生息地が減少するにつれて環境収容力が小さくなれば、陸上における密度効果は個体数の変動により大きく影響するかもしれない。
【藤岡コメント:陸上生活期に密度効果が作用する可能性は否定しないが、この実験では飼育密度が高すぎる。給餌のない野外柵で1年間も飼育したのだから、実験地での自然密度を事前に調べておくべきだ。よそでの密度報告から自然状態でも起こりうる密度だというのは無茶だし、変態後のカエル類の移動能力や環境選択能力を考えると、この研究の結果からカエル類の個体数変動について議論することにはあまり意味があるとは思えない。】
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◆アマガエルは農薬の入った水に産卵することを避ける[豊田大輔](2008.02.02)
農薬がカエル類に与える直接的な影響については研究が進んできており、また、カエル類が産卵場所を選択していることも知られているが、カエル類の産卵場所選択に対する農薬の影響についてはほとんど研究がない。本研究では、市販農薬Sevin(有効成分カルバリル[カーバメイト系殺虫剤の1種で日本では農地やマツ枯れ防除で使用される])が北米のアマガエルの1種(gray treefrog Hyla chrysoscelis、以下アマガエル)の産卵場所選択に与える影響について一連の野外実験を行った。
実験1では、農薬と捕食者がアマガエルの産卵場所選択に与える独立および合併作用を調べるため、300lのプラスチック水槽を野外に60個用意し、農薬処理区(7mg/l)と農薬対照区の2通りと、捕食者処理としてザリガニの1種Orconectes punctimanus、サンショウウオの1種Ambystoma maculatumの幼生、捕食者なしの3通りの組み合わせで計6通りを設定し、繰り返しを10とした。捕食者はカエルを捕食しないようにカゴに入れた。15日間カエルの産卵を毎日調べたところ、産卵数は農薬処理区で対照区の71%減であった。農薬処理区ではザリガニは死滅したがサンショウウオの生存率は変化しなかった。捕食者処理は単独でも農薬処理との相互作用でもカエルの産卵数には影響しなかった。実験2では、農薬処理区と対照区を10個ずつ用意し、食物連鎖の影響を除くためにすべての生物を毎日網ですくい取りながら19日間産卵数を計測した。産卵数は農薬処理区で対照区の59%減であった。自然状態では産卵場所はもっと分散しているので、実験3では農薬処理区と対照区をそれぞれ100m以上離して10個ずつ設置した。ここでも農薬処理区の産卵数は対照区の約半分であった。実験4では、カルバリルと溶媒の効果を区別するため、対照区、溶媒(アセトン)処理、カルバリル+溶媒処理、農薬処理の4通りの水槽を各9個設置した。産卵数は、カルバリル+溶媒処理(-61%)と農薬処理(-93%)において産卵数が少なく、溶媒処理の影響は見られなかった。このことから、農薬による影響はカルバリルによるものと考えられた。
本研究では捕食者の存在は産卵数に影響しなかったが、約15倍の捕食者密度で実験を行ったResetaritsとWilbur(1989)の研究ではアマガエルがサンショウウオ幼生を避けたことから、単に捕食者の密度が低すぎたのかもしれない。実験1と2では日によって対照区への好選度がばらついたが、カルバリルの濃度に影響するはずの実験開始からの日数はこの変異とは関連しておらず、対照区への産卵数が多いほど好選度が低下していた。実験開始から10日以上経ってからも農薬処理水槽における産卵数が少なかったことから、アマガエルが低濃度のカルバリルを感知しているかカルバリルの分解産物や市販農薬に含まれる非活性物質に反応している可能性が考えられる。農薬は、致死的・直接的影響がなくてもカエル類の環境選択に影響することから、地域個体群を変えてしまう危険がある。
【藤岡コメント:著者らはたぶん調査のしやすさから卵数で評価しているが、産卵個体数も気になるところ。つまり、農薬に汚染された水槽では産卵しない個体がいるのか、産卵はするけど卵数を減らすのかが分かればもっとおもしろい。】
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◆河川取水による流量低下が在来魚に有利に働くケース[諸澤崇裕](2007.11.28)
ニュージーランドの在来ガラクシアス類(キュウリウオに近い淡水魚)は、外来種のブラウントラウトとほとんど共存していない。南島のManuherikia川では、農業による取水の結果引き起こされる低水位状態がブラウントラウトと在来種のラウンドヘッド・ガラクシアス(Galaxias anomalus)(以下、ガラクシアス)の空間分布を規定している可能性がある。そこで、ブラウントラウトの影響を予測するため2種の相互関係に影響している環境要因を明らかにし、効果的な管理の基礎資料を得ることを目的とした。
Manuherikia川の135地点におけるブラウントラウトとガラクシアスの出現データを解析に用いた。魚類の出現データおよび環境要因の一部である瀬や淵などの比率は「ニュージーランド淡水魚データベース」から、傾斜、標高などは流域スケールでのGISである「河川環境分類」からそれぞれデータを抽出し、本流か支流かやトラウトの遡上を妨げる高さ3m以上の滝やダムの位置も求めた。また、最大取水許可量と7日間低流量の年平均値から取水指数(0-1、大きいほど取水によって干上がるリスクが大)を求めた。魚類の出現と環境要因との解析には重判別分析とニューラルネットワークを用いた。
135地点中ブラウントラウトは101地点、ガラクシアスは34地点で出現し、両者が共存していたのは13地点だけであった。重判別分析によると、ガラクシアスの出現地点は、淵が多くて干上がるリスクが高く、傾斜が緩いという特徴で説明されたのに対して、ブラウントラウトの出現には、流路の多様性と取水の少なさが重要であった。ニューラルネットワークモデルでは93%以上の地点で2種の出現パターンが正しく予測され、ガラクシアスには取水指数と傾斜、ブラウントラウトでは淵の比率と取水指数の貢献度が高かった。さらに、ガラクシアスのモデルにブラウントラウトを説明変数として加えるとその貢献度がもっとも大きくなり、的中率も100になった。この結果は、「人為撹乱は外来種の侵入を促進しやすい」というよくある話に反しており、「外来種は生理的な耐性が許容する場合にだけ侵入する」という別の古典的な見方と一致するものである。
【藤岡コメント:人為撹乱が保全に役立つかどうかは様々な条件による。当地は自然状態で干ばつが起こる地域であり、在来種はそうした自然撹乱(環境変動)に適応していることが重要だ。国内でも、バスやギルの排除に短期間の落水が効果的なことが知られている。】
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◆外来種の多寡は河川環境の指標となるか?[諸澤崇裕](2007.11.07)
外来生物の侵略は人為撹乱環境下で起こりやすいといわれており、河川の生態学的健全性の指標に使われてきたが、外来生物は環境劣化の原因そのものにもなりえる。そこで、次の3つの帰無仮説を検証することによって、外来魚が河川の健全さの指標となるかどうかという疑問に答えたい。(1)外来魚の分布は自然環境の傾度とは関係しない、(2)外来魚の出現・多さ・バイオマスは、在来魚群集の特性には依存しない、(3)外来魚の出現・多さ・バイオマスは人為撹乱とは関係しない。
オーストラリア、クインズランド州南東部の河川48地点で2000年9、10月に外来魚を採捕した。また、1994年と1997年の7月から10月に人為撹乱のない河川で行われた採捕データを種数予測値を計算するために用いた。1地点70~80mの区間を網で囲み、電気ショッカーと引き網でほぼすべての魚を採捕した。集水域の土地利用等は地形図やGISにより算出し、水深や流速は各調査地点の40-60ヵ所で測定して平均値や最大値を求め、さらに各調査地点ごとに電気伝導度や濁度、全窒素、溶存酸素、水温、河岸植生の被度などを記録した。
本研究では30種の魚類が確認され、うち2科5種(Poeciliidae=カダヤシ科:Gambusia holbrooki, Xiphophorus helleri, X. maculatus, Cyprinidae=コイ科:コイ,キンギョ)が外来種であった。外来種の中でもG. holbrookiが全採捕魚の18.4%を占め、出現頻度も60%と高かった。外来種と物理環境や在来種の間には有意な相関は認めらなかった。一方で、外来魚が出現した地点は、耕作率、都市化率など人為撹乱の高さで特徴づけられた。さらに主成分分析を使って変数を集約した上で行ったGLM分析では、水草の量や河岸植生、溶存酸素、底質など、やはり人為撹乱と関わる要因が選択された。つまり、帰無仮説の(1)と(2)は支持され、(3)は支持されなかった。したがって、いくつかの制限付きながら、環境耐性の強い外来種ならば河川の健全性の指標になりうるだろう。
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◆両生類を保全するためには湿地とその周辺の森林が重要[豊田大輔](2007.09.14)
世界的な両生類の衰退、絶滅の原因の一つとして、農業、林業、都市化などの開発による生息地の断片化と改変が挙げられる。両生類を保全するには、両生類の生息に適した陸域生息地を緩衝帯として湿地周辺に維持することが重要である。本研究は、森林の人為的改変と湿地の物理的特徴が、森林地域内の湿地に生息する両生類に与える影響を評価することを目的として行った。
調査は、米国北東部のニューハンプシャー州メリマック川集水域にある湿地61ヵ所で行った。北方広葉樹林が優占し、川に沿って農地や都市のパッチが散在している。湿地内を水深(0.5m以上、0.5m未満)と植生の有無により、4種類のマイクロハビタットに分け、各マイクロハビタットでタモ網を用いた1m2のすくい取りを15回行い、両生類を捕獲した。湿地の周辺の森林被覆率および湿地のサイズ、道路と河川の密度はGISを用いて算出した。 Rana sylvatica(以下、ミドリガエル)が一時的湿地において、Notophthalmus viridiscens(以下、アカブチイモリ)が恒久的湿地において密度が高かった。種の豊富さは、湿地から100m以内の緩衝帯の森林被覆率にはほとんど影響されなかったが、100~1,000mの範囲の森林被覆率から比較的強く影響された。種数は、周囲1,000m以内の森林被覆率が40%以下の湿地では低かった。アカブチイモリとAmbystoma maculatum(キボシサンショウウオ)は周辺の森林被覆率が80%以上で個体密度が最も高くなった。ミドリガエルとRana clamitans(ブロンズガエル)の個体密度は、森林被覆率と相関はなかった。
両生類の保全のためには、恒久的湿地と一時的水域(季節的湿地)の両方が必要である。湿地周辺の陸域については、湿地の直近よりもむしろ1,000m程度の広い範囲で森林を維持することが重要であることが示された。また、メタ個体群の保全のためには緩衝帯という考え方だけでは不十分で、湿地間を個体が移動できる連続性を維持することも重要である。
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◆生物多様性の減少に効いているのは外来種と生息地改変のどっち?[諸澤崇裕](2007.09.14)
外来種の侵略は生息地改変に次ぐ生物多様性の喪失の要因ととされている。しかし、外来種と生息地改変はしばしば関連しているため、絶滅の要因がどちらかを見極めることは難しく、最近では保全における外来種の重要性を疑問視する著者もいる。
カリフォルニア州では固有淡水魚の10%が絶滅し、48%が絶滅のおそれのある種(endangered, threatened, or of special concern)とされ、外来魚の増加と魚類相の均質化も生じている。本研究では、43の主要な流域について、流域ごとの魚類の在・不在データ(Moyle 2002)から求めた絶滅数と絶滅のおそれのある種数(the number of fish species of conservation concern: FCC)、定着した外来種数、およびGISとデジタル地図により計測した7要因(ダム密度、水路密度、水道密度、開発比率、農地比率、保護区比率、流域面積)を用いて、FCCを目的変数とする回帰分析とパス解析を行った。
カリフォルニア州における魚類の種数と種組成は、過去150年間で外来種の侵入と生息地改変により著しく変化した。平均的なカリフォルニア州の流域では、0.75種が絶滅、2.6種が絶滅のおそれのある種となり、10.3種の外来種が定着した。また、1,165基のダムが建設され、流域内の14%が開発され、20%が農業によって何らかの影響を受けた。FCCを説明する上位の回帰モデルでは、在来種の種数、外来種の多さ、ダム密度、水道密度の各変数が採用された。一方、パス解析では環境改変の直接的な影響を除いたモデルが最良となり、在来種の減少に直接影響しているのは環境改変よりも外来種であることが示された。以上の結果は、カリフォルニア州では、外来種の侵入が在来種の絶滅や減少の主要な原因であり、一方、環境改変の最大の問題は外来種が定着しやすい環境をもたらすことであることを示唆している。
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◆酸欠に対する反応は魚種によってさまざま[諸澤崇裕](2007.07.22)
水系では水温躍層(水温の急な変化による層)の発達や過剰な栄養塩・有機物の流入によって酸欠状態が生じることがある。しばしば酸欠が起こる環境でも多くの魚は表層呼吸(ASR:Aquatic Surface Respiration)などの行動によって個体群を維持できる。オーストラリアの内陸河川では雨期と長い乾期により隔離された水域(わんど)が氾濫原にできる。酸欠の起こりやすい夏の魚類構成種はわんどの深さによって大きく異なっていることから、魚類構成を決める上で酸欠が大きな役割を果たしていると考えられる。本研究では、水温の高い夏における魚類の酸欠に対する行動的反応を実験下で評価した。
オーストラリア南東部のOvens川から採集された9種の魚類を実験に用いた。40×40×60cmの水槽で1回の実験に同種5~7尾を使用し、1種につき3回くり返した。空気の代わりに窒素ガスを水槽内に送り込むことによって約2時間かけて無酸素状態にした。魚がASRを行うまでは10分ごと、ASRを開始後は5分ごとに水温と溶存酸素濃度とASRをしていた尾数、さらにえら呼吸率(GVR:Gill Ventilation Rate)の指標として鰓蓋(えらぶた)を動かす頻度を記録した。実験魚の10%、50%、90%がASRを行った時の溶存酸素値(各ASR10、ASR50、ASR90)は以上のデータからから推定した。
スメルト(Retropinna semoni)とレッドフィンパーチ(Perca fluviatilis)、ヒラガシラガラシアス(Galaxias rostratus)の3種は2.2~2.5mg/lでASRを開始し、GVRは溶存酸素の低下とともにやや増加した。この3種は溶存酸素が1mg/l以下では生存できなかった。カダヤシ(Gambusia holbrooki)とサザンピグミーパーチ(Nannoperca australis)はレッドフィンパーチやヒラガシラガラシアスとほぼ同じASR10の値を示したが、ASR90の値はそれぞれ0.42と0.59mg/lと低かった。また、カープガジョン(Hypseleotris spp.)とキンギョ(Carassius auratus)、コイ(Cyprinus carpio)はASR10(0.8~1.1mg/l)、ASR90(0.2~0.5mg/l)ともに低い値を示した。GVRについてはおおよそASR90の溶存酸素濃度で増加した。ドジョウ(Misgurnus anguillicaudatus)は無酸素状態でもあまりASRをせず、代わりに空気呼吸を行った。そして、低溶存酸素下ではGVRをしなくなった。以上のように、低溶存酸素耐性と行動によって9種の魚は3種類のグループに分けられた。
【藤岡コメント:実験に使われた9種はこの河川での普通種ということだが、在来種は4種のみで、カダヤシやコイ、キンギョ、ドジョウ、レッドフィンパーチは外来種ということに驚いた。ただ、在来種か外来種のどちらかが低酸素に強いというわけではなく、著者も外来種問題にはほとんど触れていない。】
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◆大規模な除去実験が明らかにしたイワナの密度依存的成長[諸澤崇裕](2007.03.06)
同種個体では資源要求が極めて似ているため、種内競争はきびしく、また個体数密度の増加は個体あたりの資源獲得量や成長率の減少をもたらすと考えられる。魚類においては密度と成長の逆相関や食物獲得と成長率の相関については研究蓄積がある。しかし、野外での研究は少なく、密度と食物獲得、成長率を同時に追った研究はない。本研究は、大規模な除去実験の実施中とその前後の20年間におけるデータから、同種および近縁種の個体数密度が食物獲得と成長に大きく影響するという仮説を検証した。
ノルウェー北部のTakvatn湖(14.2km2)にはブラウントラウト(Salmo trutta)のみが生息していたが、1930年頃に導入されたホッキョクイワナ(Salvelinus alpinus)が増えて高密度となり、1980年代初めには小型化したイワナが優占し、ブラウントラウトは1%未満になっていた。この湖では1984年から89年に合計666,000個体31.3トンのイワナが定置網で除去された。除去とは別に1980年から1999年に6度(80、86、89、92、94、99年)刺し網でイワナを採捕した。個体数密度は8月における採捕努力量あたりの捕獲数(CPUE)に換算して比較した。胃内容物の乾燥重量と灰重量から食物消費率を、耳石から年齢を、同一齢クラスの年間体重差から年間相対成長率(SGR)を求めた。
個体数密度は、除去実験が行われていた80年から89年にかけて減少し、除去実験終了後の92年から99年には増加した。食物消費率と相対成長率には正の相関が認められ、これらのいずれもが個体数密度と負のべき乗回帰の関係が認められた。さらに、イワナ単独よりもブラウントラウトとの合計個体数密度の方がより強い相関関係を示した。新生息地導入後の密度増加による種内競争によって食物不足が生じて個体の成長が阻害されていたが、除去によって種内競争から開放されて成長率がよくなり、その後のイワナおよびブラウントラウトの個体数回復によって再び成長率が低下したと考えられた。すなわち、同種および近縁種の個体数密度は食物消費率を通して個体の成長率を制限することが確かめられた。
【藤岡コメント:漁業資源管理の一環として行われた実験のようだが、そこでちゃんとした個体群モニタリングが行われてきたことが活かされた優れた成果だ。国内で行われているオオクチバスの除去事業などでも同様な研究は可能なはず。】
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◆二枚貝選択性の可塑的がタナゴ類の多種共存を許す?[諸澤崇裕](2007.02.02)
親の産卵選択は子孫の生存率に直接影響するため、親の適応度を左右する。日本では2~6種が同所的に生息するタナゴ類は、ひとつの二枚貝に複数種の複数メスが産卵することがある。そのため、タナゴ類のメスは、産卵する二枚貝を選ぶ過程で種内および種間での競争にさらされているかもしれない。これまで、タナゴ類の産卵生態の種による違いはニッチ分割によると解釈されてきたが、偶然的な結果かどうかは検討されてこなかった。
アブラボテ(Tanakia limbata)、ヤリタナゴ(Tanakia lanceolata)、シロヒレタビラ(Acheilgnathus tabira tabira)、カネヒラ(A. rhombeus)のタナゴ類4種が生息する三重県中部の櫛田川支流、祓川(はらいがわ)の約100mの区間で、2年余りにわたって毎週餌入りビンドウでメスを捕獲し、産卵管長と体長を測定し、完熟卵の有無を確認した。また、河川横断面におけるタナゴ類と二枚貝の空間分布をそれぞれ餌なしのビンドウと手堀りによって調べた。産卵が確認された二枚貝は網付のボトルに入れて沈め、出てきた胚や稚魚についてmtDNAのチトクロームb領域により種を同定した。
秋に産卵するカネヒラ以外の3種の産卵期は3年とも5月前後で重複していた。しかし、産卵床としてはシロヒレタビラは流れが速く水深がある流心部の大型のオバエボシガイ(Inversiunio brandti)を利用し、ヤリタナゴは二枚貝の位置には選択性を示さなかったが、小型のカタハガイ(Obovalis omiensis)を利用した。一方、アブラボテは二枚貝の種については弱い選択性しか示さなかったが右岸側のヨコハマシジラガイ(I. yokohamensis)を利用した。本研究および既存研究は、タナゴ類の二枚貝についての選好性が、種間競争や二枚貝の密度と分布、物理環境による制限などによって変化する可塑的なものであることを示唆している。このような可塑性が結果的にはタナゴ類の共存を可能にしているのかもしれない。
【藤岡コメント:タイトルどおりの内容で、繁殖生態としては優れた研究だが、タナゴ類の多種共存のヒミツがわかったのかと期待すると拍子抜け。序章にある、それぞれの種が他種とは独立に寄主を選んでいるだけかも、という問題提起は結局検証されていないようだ。タナゴに産卵されていない二枚貝が多いことや利用される貝の地域による違いから、二枚貝をめぐる競争は重要性でない、という解釈も可能だろう。】
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◆「ほどほどの」農薬はザリガニを減らしてウシガエルを増やす(2007.01.26)
化学物質は直接的に水生生物の減少をもたらす危険があるが、捕食者や競争相手、餌などを通して間接的に影響することもある。殺虫剤カルバリルは、動物プランクトンの減少によって植物プランクトンの増加を招き、植物食のカエル幼生の成長を促進することが知られている。ここではカエル幼生やその捕食者へのカルバリルの影響を評価した。
直径1.85m、容量1,480?のタンクを36個用意し、1,000?の水と1kgの落ち葉、自然の池から採取した水500m?分のプランクトンを入れた。捕食者については、捕食者なし、ブルーギル2個体、アメリカザリガニ2個体、イモリ2個体の4通り、殺虫剤については、なし、3.5mg/?、7mg/?の3通りの設定を組み合わせて、繰り返し数を3とした。被食者としてはウシガエル幼生45匹を入れ、45日目までに5回ウシガエル幼生の行動と動物プランクトンの有無をチェックし、69日目に水を抜いてウシガエル幼生と捕食者の体重を計測した。
ザリガニはカルバリル処理区ではすべて死亡した。ブルーギルも高濃度区では死亡し、低濃度区でも成長率が低下した。イモリはカルバリル処理区でやや成長が低下したものの、死亡個体はなかった。ウシガエル幼生の生存率は、すべての捕食者処理において、カルバリル低濃度区で対照区より向上し、高濃度区で低下した。成長量は、カルバリル高濃度区でもっとも大きかった。カルバリル処理区では初期に動物プランクトンがいなくなったが、38日目には回復した。このように、化学物質への感受性は生物によって違うため、群集構造が化学物質によって大きく変わることが野外でもあるだろう。ウシガエルの侵入地域においては、農薬によって捕食者が除去されてウシガエルがいっそうはびこる結果になることも懸念される。
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◆侵入種のザリガニは餌をめぐる競争で在来の底生魚より優位(2007.01.24)
ザリガニ類は世界中に導入され、複数の栄養段階を利用する雑食性のため水界の生物相に大きな影響を与えうる。魚類に対しては、捕食やシェルターをめぐる競争が研究されてきたが、餌をめぐる競争については報告がない。米国コロラド川流域にはもともとザリガニ類はいなかったが、現在ではswamp crayfish(アメリカザリガニ)とvirile crayfish Orconectes virilis(以下、後者をザリガニとする)の2種が定着している。本研究では、底生無脊椎動物を主食とする2種の絶滅危惧魚類、コイ目ウグイ亜科のGila chub Gila intermediaとコイ目sucker科のflannelmouth sucker Catostomus latipinnisにザリガニが餌をめるぐ競争を通じて影響しているかどうかを水槽実験によって検証した。
20個の200?(直径61cm)水槽を使って(1)ザリガニ3匹、(2)魚3匹、(3)魚6匹、(4)ザリガニ3匹と魚3匹、という4処理で5つの繰り返しを設定した。ザリガニは♀2+♂1とし、魚とサイズを合わせた[重さはザリガニの方が数倍重い]。各タンクには小石を入れたペトリ皿を3つ金網に接着して沈め、毎日一定量(0.75g、約80匹)のユスリカ幼虫(アカムシ)を、浮遊しないように工夫してペトリ皿の小石に混ぜて与えた。chubについては1999年10月28日~11月22日、suckerについては2000年1月17日~2月10日に実験し、その間に3回ザリガニと魚の重さを測った。
chubの成長率は、ザリガニ混成区で同種3匹区より低かったが、同種6匹区ではさらに成長が悪く、体重は減少した。一方、suckerの成長率は、同種6匹区で同種3匹区より低かったが、ザリガニ混成区でさらに低かった。ザリガニの成長はどちらの魚種にも影響されなかった。つまり、ザリガニはこれら2種の魚に対して優位な競争者であり、特にsuckerに強い影響を与えることがわかった。ザリガニは餌のハンドリングに時間を要し、かつ攻撃的なので、干渉型競争を通して魚に影響していたのだろう。
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◆侵略的外来種のカエルを選択的に減らすキーストーン捕食者のイモリ[諸澤崇裕](2006.09.05)
上位捕食者のキーストーン種は優占種を選択的に捕食することで競争に弱い種の消失を防ぐ役割を果たす。この原理により、キーストーン捕食者が移入種に優占された群集の種多様性を維持できる可能性がある。そこで、アメリカフロリダ半島に生息している在来、移入カエル群集とキーストーン捕食者としてブチイモリ(eastern newt Notophthalmus viridescens)を用いて実験した。
メソコスム(隔離水界)として屋外に568Lタンク(水深33cm、水量285L)を40個設置し、各タンクに自然界から採取したカエル類の幼生(オタマジャクシ)を放した。在来種のみ(ナンブヒキガエル、アメリカヒメアマガエル、アメリカアマガエル、ナンブヒョウガエル)、在来種+オオヒキガエル、在来種+キューバヅツキガエル、在来種+オオヒキガエル+キューバヅツキガエルの4処理ではカエル各種の数は同数で総数はタンク当たり240匹とし、さらに4処理それぞれに各タンク1個体のブチイモリを加えた計8処理を5タンクずつ用意した。
在来種と移入種の種間関係においては、キューバヅツキガエルが在来優占種であるナンブヒキガエルの生存率に負の影響を与えたが、他の在来種への影響はほとんど見られなかった。一方で、捕食者であるブチイモリ存在下では、在来種の生存率は増加し、キューバヅツキガエルの生存率のみが低下した。この結果より、ブチイモリのキーストーン捕食効果によって在来カエル群集が維持されると考えられた。
【藤岡コメント:侵入種であるキューバヅツキガエルは行動が活発なためイモリに補食されやすいようだ。一方で、在来種だけの群集では優占種がこのイモリに選択的に捕食されることはなかったことから、捕食者による侵入種の抑制という今回の結果を一般化するには慎重であるべきだろう。】
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◆移入マス類は在来種間の競争も激化させる[諸澤崇裕](2006.08.01)
ヨーロッパ原産のブラウントラウト(Salmo trutta)は、在来種であるアメマス(北海道・東北に生息するイワナの亜種、Salvelinus leucomaenis)やサクラマス(=ヤマメ、Oncorhynchus masou)より競争において優位であり、北米原産のニジマス(Oncorhynchus mykiss)もアメマスより優位なことが実験下で示されている。しかし、北海道の多くの河川ではアメマスとサクラマスが同所的に生息している。そこで、在来2種の存在下での移入マス類の影響を定位位置(focal points)の変化を通して調べた。
2002年と2003年の6月~8月に側面から魚を観察できる人工水路(幅1m、長さ16m、深さ1m)を使って実験した。2ヵ所ずつの淵(水深60cm)と瀬(水深20cm)を配し、うち淵と瀬の1ヵ所ずつにはカバーをして、体長10~15cmのマーク付き個体を1回の実験に30匹ずつ放して3種類の実験をした。処理1はアメマスとサクラマスのみ、処理2はアメマス+サクラマスにブラウントラウトまたはニジマス、処理3はブラウントラウトまたはニジマスを水路に放流した。
アメマスの方がサクラマスよりも有意に深い場所を利用した。ブラウントラウトは在来2種より深い場所を利用し、ニジマスはアメマスとは深さに差がなかったがサクラマスより深い場所を利用した。在来種と移入種が同所的に存在しないときには、餌条件のよい淵上端から定位置までの距離は種間で差がなかったが、同所的に存在するとアメマスは移入種よりも遠い位置に移動した。これは、ブラウントラウトが存在するときには、在来2種間の生息域重複が増加し、アメマスがサクラマスによって最適な採餌場から移動させられた。また、ニジマス存在下ではサクラマスとニジマスによりアメマスは移動させられた。これらのことから、移入種の存在により在来種間の種間競争が激化することが示唆された。
【藤岡コメント:それでもかなりの河川でこれら3種ないし4種が共存しているのがある意味で不思議。実験では餌としてオキアミを流していたが、浮遊昆虫や底生昆虫のいる場合はどうなるんだろう?】
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◆バスはプエルトルコでも在来魚食魚と競合[諸澤崇裕](2006.06.23)
ビッグマウススリーパー(以下、BMS)(写真)はカワアナゴ科の広塩性硬骨魚で、熱帯・亜熱帯の川・ラグーン・湖等に生息する。近年、フロリダやプエルトリコではたぶん水文的変化が原因で減少している種である。プエルトリコ南部のある貯水池(ダム湖、Carite Reservoir)では、このBMSと移入種であるオオクチバス(Micropterus salmoides)・ピーコックバス(Cichla ocellaris)が生息しているが、最上流部の貯水池で餌になる魚が少ないので、種間競争が生じている可能性がある。そこで、この貯水池でこれら3種間の食物重複を調べた。
1999年10月から2001年10月まで3カ月おきに電気ショッカーでBMSを416匹、オオクチバスを93匹、ピーコックバスを25匹採捕し、体サイズ(全長100mm未満、100-200mm、200mm以上)ごとに胃内容物を比較した。その結果、BMSとオオクチバスは成長するにつれ無脊椎動物食から魚食性へと変化したが、ピーコックバスは完全な魚食性であった。空胃個体の割合はBMSで68%とオオクチバス(47%)やピーコックバス(32%)より高かった。食物内容は、200mm以上のBMSとオオクチバスの間でのみ有意な重複が見られた。重複の程度は体サイズと正の相関があった(大きい個体間で重複が大きい)。
確認された高い食物重複、およびBMSとオオクチバスは生息地利用も似ているため、種間競争が生じていると考えられる。ここ10年でプエルトルコの3つの貯水池でBMSが確認されなくなった例も、BMSがオオクチバスとの競争上不利であることを示唆している。今後、BMSの保護、管理を行っていく上でオオクチバスの存在下、非存在下で更なる研究が必要である。
【藤岡コメント:プエルトリコでは2種のバスはそれぞれ合衆国と南米北部からの移入種であるが、北米南部から南米北部にはBMSとこれらのバスがもともと共存していた地域もあると思われる。なお、全長でクラス分けしているが、体型の違いから同サイズではBMSの方がバス類よりだいぶ軽いし、捕獲個体の平均体重もずっと軽かったようだ(原著参照)。】
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◆リン濃度が高いとタナゴの仔稚魚は生きられない[諸澤崇裕](2006.05.28)
人為由来のリンは富栄養化を招く重要な汚染物質で、植物への影響や酸素欠乏などを通して魚類に影響する可能性が指摘されている。本研究ではリンがヨーロッパタナゴの繁殖に直接ないしは母貝を通して影響するかどうかを調べた。
ヨーロッパタナゴの産卵最盛期に35個体の淡水二枚貝Anodonta anatine(ドブガイの仲間)をイギリスの水路で採取し、プラスチックの鉢(75×22×17cm)に入れて遮光した屋外の温室で飼育した。これらの二枚貝をランダムに7種類のリン濃度(0・250・500・750・1000・3000・5000μg/?)で処理した。そして、タナゴの浮出が終わるまでの6週間、1日に2回二枚貝の入水(出水)管が開いているか閉じているか、二枚貝の移動距離、タナゴの浮出を確認し、浮出稚魚については成長段階を調べた。
ヨーロッパタナゴにおいては、リン濃度750μg/?以上で有意に仔稚魚が未成熟で浮出するようになり、さらに3000μg/?以上では致死率が増加した。二枚貝では3000μg/?以上で換水頻度と移動が減少した。タナゴへの影響はリンの直接的な毒性か、二枚貝の換水頻度が減少して二枚貝の鰓の中の酸素が減少した結果引き起こされたと考えられる。ヨーロッパタナゴと二枚貝の保全のためにはリン濃度を500μg/?以下に保つことが重要である。
【藤岡コメント:方法を読むと、実験で設定した濃度はヨーロッパの淡水水系ではあり得るようだ。ただ、貝の採集地付近ででは50~520μg/?ということなので、当該地ではリンによるタナゴの減少は起きていないと思われる。日本のタナゴ類生息地ではどれぐらいなのか気になるところ。】
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◆アメリカ中西部のため池は両生類を支えている(2005.03.09)
アメリカ中西部では農地が卓越しているため、農業のあり方が地域の野生生物に大きく影響する。ミネソタ州南東部では多くの自然湿地がすでに農地に転換されているが、主に土壌浸食を防ぐために何千というため池が作られている。この地域の30個のため池(constructed ponds)と10個の自然の池において、池およびその周辺環境が両生類の種多様性および繁殖成績に及ぼす影響を2000年と2001年に調べた。
両生類の生存に影響することが知られている水質や植生、捕食者、近隣の湿地までの距離など、26の変数について測定し、ロジスチック回帰モデルで評価した。見つかった両生類は計10種。種多様性は、小さく、窒素濃度が低く、tiger salamanderはいるが魚がいない池で高かった。繁殖成績は、窒素濃度が低く、植生が少なく、魚がいない池で高かった。
家畜がアクセスできる池では、水質の悪化と植生破壊によって両生類が少なかったので、フェンスで囲うとよい。魚がいる池で両生類が少なかったのは、多くの両生類の幼体が魚のいない小さく、一時的な水域を必要とするという従来の知見と一致する。一方、両生類を捕食するtiger salamanderのいる池で両生類多様性が高かったのは、いわゆる間接効果によるのかもしれない。池そのものに比べて周辺環境の影響が少なかったのは、種によって生活範囲が大きく異なるためと考えられる。
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◆カナダにおける魚やザリガニの季節移動[岩田 樹](2005.03.04)
多くの水生動物が、生活史の各ステージごとに異なる環境を利用している。この研究では、池・小川・湖の3つの違う環境間で魚類2種とザリガニの夏の移動を明らかにし、定期的な移動の環境的きっかけの影響を考察することである。
調査地は、カナダ・ケベック州。ビーバー池とエドワード湖が小川でつながっており、そこに生息する2種の魚類(ブルックチャー、ブラウンブルヘッド)とアパラチアンザリガニの3種を対象とした。測定した環境要因は、水位、水温、日長、月長、生物の年齢である。
ブルックチャーは生後1年は小川を生育場として利用し、2年以上たつと止水域に移動する。これは、種間競争や捕食圧が止水域より小さいことによると考えられる。移動のきっかけとなる環境要因は、水位と水温だと考えられる。ブラウンブルヘッドは、小川を池と湖のコリドーとして利用している。また、移動のきっかけになる水位や水温の変化は、若い個体のほうが強く反応する。ザリガニは、夏になると年齢に関わらず小川から移動してしまう(減少する)。移動のきっかけは魚類2種と同じように水位と水温の上昇であると考えられ、若い個体のほうがよく移動する。
これらのことから、各生物種によって小川の利用法が異なることが明らかとなった。また、各環境間の移動のきっかけは、気候要因であり、その影響は若い個体により多く出る。
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◆水田周辺の水路おける淡水魚の種多様性と豊富さ[岩田 樹](2005.03.01)
水田周辺の水路には多くの淡水魚が生息しており、中には絶滅危惧種(アユモドキやスイゲンゼニタナゴ)もいる。水田と水路のつながりに注目し、様々な水路タイプ間で魚類群集、種多様性、無脊椎動物(魚類の餌)の構成を比較した。
調査地は長野県上田市周辺の水田地帯。1996年~1999年に40地点の水路で環境要素(幅、水深、流速、河床タイプなど)、魚類、無脊椎動物(ユスリカなどの底生動物、落下昆虫など)を調査した。
その結果、魚類で6科19種2323個体が採集された。魚類の種数や多様度は、水田に容易に侵入できる水路で高かった。魚類の個体数やバイオマスは、河床タイプにもっとも左右され、コンクリートではない河床の水路でより多く、次いで、水田と水路のつながりの強さに影響された。また、魚類の餌となるユスリカも水田とのつながりが強い水路の方が多かった。魚類の餌の内容も、水田とのつながりの強さで違いが見られ、水田とのつながりが弱い水路では、小型魚類(体長4cm未満)の餌が極端に重複していた(みんな同じ餌を食べていた)。魚類の豊富さはタモロコの存在と正の相関を示したのに対して、種多様性はドジョウの存在と負の相関を示した。
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