餌付いた母グマの子も餌付きグマになるのか?(2008.07.07; 2008.09.30)
クマでは親から子への社会的学習の存在がよく指摘されている。我々はセコイア・ヨセミテ国立公園において、アメリカクロクマ(Ursus americanus)の人間の食べ物に餌付いた行動が、母親から子へ伝わるのかどうかを調べた。
調査地はカリフォルニア州のシェラネバダ山脈西側に位置するセコイア国立公園とヨセミテ国立公園である。1995~2006年の間、両国立公園のキャンプ場や散策地域で、32頭の母グマ、99頭の幼獣を捕獲し標識を付けた。標識の付いた親子は調査員が観察し、母親が餌付いているか、子供をどこで育てているか、母親からの自立後子供は餌付いたか、ということを調べた。人間の食べ物に餌付いている母親の子供のうち、61%が人間の食べ物で育てられ、39%が野生で育てられた。人間の食べ物で育てられた子供の81%が母親からの自立後もずっと餌付いた。母親が餌付いていても、野生で育てられた子供は自立後16%しか餌付かず、84%は野生で採餌した。野生の母親の子供のうち90%は自立後も野生で採餌した。子供が餌付くかどうかは、母親が野生で育てるか、人間の食べ物で育てるかということに強く影響されていた。
このことから、餌付き行動は母親から子への社会的学習によって伝わるといえる。ただし、野生で育てられたにも関わらず餌付いたり、反対に人間の食べ物で育てられたのに野生で採餌した子供もいた。餌付くかどうかは母親の影響も大きいが、子供が自分で試行錯誤して餌付くこともあるのだろう。
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木の成長とテルペン類はトレード・オフの関係にはない(2008.07.10; 2008.09.30)
アメリカクロクマ(Ursus americanus)の樹皮剥ぎに関して、維管束組織中の糖類とテルペン類がクマの好みに影響することがわかっている[『クマは糖が多くてテルペン類が少ない餌を好んで摂食する』参照]。一方、林業では遺伝子選抜によって形質の良い樹木を生み出してきた。しかし成長の良い木は、防御する力、すなわちテルペン類を生産する力が弱いかもしれない。品種改良の発展は、クマに好まれやすい樹木を作ってきた可能性がある。よって本研究では、樹木の成長とテルペン類がトレード・オフの関係にあるのか、それらが遺伝的な影響下にあるのかどうかを調べた。
1997年の1月から6月に、カスケード山脈の北中部、オレゴン州の5つの系統試験地で、ベイマツ(Douglas-fir, Pseudotsuga menziesii)から維管束組織を採取した。ガスクロマトグラフィー法で採取した組織のテルペン類の量を測り、一部は凍結乾燥し糖類の分析を行った。木の成長の指数として、樹齢15年と28年の時のDBHを測定した。その結果、ある種のテルペン類や糖類は遺伝的な影響下にあることが判明したが、樹木の成長とテルペン類の量に有意な関係は見られなかった。成長と糖度の間には有意ではないが正の相関があった。
速く成長する遺伝子を持つ樹木でも、多くのテルペン類を生産していたことから、成長とテルペン類の間にはトレード・オフの関係は見出されなかった。今回の結果から、ベイマツの成長は化学防御の代用ではないと言える。したがって、成長も良くてクマに好まれないような特性(低い糖度、高いテルペン濃度)を持つ樹木を作るのは可能かもしれない。
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ムースの出産を狙って近づくアラスカのクロクマ(2008.07.28; 2008.09.30)
アラスカのような北方林では、季節的に利用できる資源が限られているため、クマの生息地選択は重要である。ムース(ヘラジカ,Alces alces)の出産時期は5月頃であり、ムースの幼獣は冬眠から目覚めたクマにとって重要なタンパク源であると考えられる。この研究では、ムースの出産場所へクロクマが近づくのかどうか、ムース幼獣とクロクマの生息地が重複しているかどうか調べた。
アラスカ州デナリ国立公園西側で、ムースの出産場所と行動圏が重複している6頭のアメリカクロクマ(Ursus americanus)にGPS首輪を取り付け、2001~2003年の間位置を測定した。測定の頻度は4~9月は3時間おき、10~3月は1日1回である。ムースの幼獣200頭に発信器を付け、死亡率や生息地の調査を2001~2004年に行った。ムースの出産場所とクマの距離はArc View GISを用いて算出した。クロクマとムース幼獣の生息地は、30m格子で区切り、針葉樹林、針広混合林などの7種類に分類し、カイ二乗検定で重複しているかどうか確かめた。
冬眠から目覚めたクマとムースの出産場所との距離は、約3週間、日数を経るに従い縮まっていった。クマとムース幼獣の生息地利用は完全に同じではなかったが、似た場所を多く利用していた。このことから、クロクマはムースの出産場所に近づくということが示された。しかし、我々の調査では、ムースの幼獣を狙ってクマが移動したのか、ムースと同様に栄養価の高い植物[イネ科やカヤツリグサ科など]を求めて移動したのかどうかわからない。湿原の栄養価の高い植物を求めて両者が同じ場所に集まり、遭遇率が高まっている可能性がある。他の研究から推察すると、クマは生息地選択の要因として第一に植物資源を優先し、第二に動物性タンパク質を優先しているようである。
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ピューマは人間の活動に関係なく生活する(2008.07.30; 2008.09.30)
ピューマ(Puma concolor)が人を襲うことは稀だが、近年ピューマと人間の遭遇が増加している。ピューマの生息地へ多数の観光客が訪れる自然公園では、ピューマの生態をよく理解しておく必要がある。本研究では、ピューマの行動パターンと人間の行動パターンが時間的、空間的にどう関わっているかを調べた。
調査地は、米国カリフォルニア州サンディエゴ郡にある広さ約100km2のカイヤマカ・ランチョー州立公園である。毎年の観光客は58万人にのぼる。2001~2003年の間公園の内外で10頭のピューマ(オス5頭、メス5頭)を捕獲しGPS首輪を取り付け、朝・昼・夕方・夜の一日4回定期的に、1頭につき平均9.4ヶ月位置を測定した。100m以内で2回以上連続した位置の記録がある場合、現地へ行きそこが獲物の隠し場所かどうか調べた。また、公園内の散策路に人が赤外線を横切ったら数をカウントする装置を設置し、観光客の活動パターンを記録した。
一日の時間帯でみると、ピューマは朝夕と夜に、人間は昼にもっとも活動するなど正反対のパターンを示した。ピューマは薄暗い時間や夜間に移動や狩りをすることが他の研究でも知られており、朝夕がもっとも遭遇の確率が高いと考えられる。1週間のうち、人が多い土曜と人が少ない水曜で比べると、行動に差がある個体もいれば差がない個体もいた。獲物の隠し場所も、道路や散策路などの公園施設に関係なく分布している個体もいれば、遠く、あるいは近くに分布している個体もいた。ピューマの位置や獲物の隠し場所の分布と、人間活動地域との間には明確な傾向はみられなかった。
人間への慣れが、ピューマに人間活動に関係ない行動をさせているのかもしれない。この公園での人とピューマの遭遇の危険性は無視できるものではなく、観光客への正しい教育や利用時間帯制限などを設け、遭遇を最小化していくことが重要である。
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クマは砂利道より舗装された道路の方が好き?(2008.09.24; 2008.12.23)
道路は一般的に野生動物に負の影響をもたらすと言われている。道路が与えるアメリカクロクマ(Ursus americanus)への脅威には、狩猟、密猟、車両衝突などがあるが、逆に道路沿いにクマの食物となる植物が生え、正の影響をもたらすこともある。道路に対するクマの反応は、その個体群のおかれている状況によって様々だろう。我々は、交通量の少ない道路をもつクマ保護区で、どのような道路(舗装道路、砂利道)がクマの生息地選択に影響を与えるのかを調べた。
米国ノースカロライナ州西部のPisgahクマ保護区において、1981-2001年の間、118頭のクマを捕獲し発信器を付け、位置測定を行った。クマ1頭につき夏と秋ごとに行動圏を推定し、GIS上で道路地図と重ね合わせ、道路タイプ(舗装道路、砂利道)ごとにクマの好みを指標化した。クマの生息地選択は、2次選択(行動圏)と3次選択(行動圏内の生息地)に分けて分析した。結果、2次選択ですべてのクマが夏と秋に砂利道を避け舗装道を好んでいた。3次選択でも、ほとんどのクマは夏と秋に砂利道を避け舗装道を好んでいた。また、成獣メスが他のクマに比べてより強く砂利道を避けていた。
他の研究の多くが、クマにとって舗装道の方が負の影響を与えると報告しているが、Pisgah保護区ではその逆となった。これは、保護区内の車の交通量が少ないこと、密猟者の多くが砂利道を使うことが原因だと考えられる。Pisgah保護区のクマ個体群にとって道路の及ぼす負の影響は、車両衝突よりも密猟の方が大きいのだろう。狩猟の行われない夏にも砂利道を避けていたのは、ハイキングなどで人と接触する危険が多いためだろう。舗装道を好んでいたというのは驚きだが、道路周辺の食物を利用していたのかもしれない。成獣メスが強く砂利道を避けたのは、一箇所に留まる傾向の強いメスは経験的に道路の危険を知る機会が多かったからだと考えられる。クマの生息地を改善する目的で伐採を行う人は、伐採に伴ってできる砂利道がクマに及ぼす影響も考慮すべきである[伐採を行えばキイチゴ等のクマの餌となる植物が育つため]。
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オオカミ導入でアカシカの生息地利用は草原から低木林へシフトする(2008.10.07; 2008.12.23)
被食者が捕食者に対しどのような行動をとるのかは多くの研究で調べられてきた。しかし、絶滅した捕食者が再導入された場合、前からそこにいる捕食者や被食者に、どのような影響を与えるかはよくわかっていない。北米モンタナ州マディソン山系に2002年、オオカミ(Canis lupus)が再導入された。ここには主要な捕食者として、追跡型のオオカミの導入以前から待ち伏せ型のピューマ(Puma concolor)が存在する。本研究では、オオカミとピューマの被食者選択のパターンが変わるか、被食者の環境選択が新たな捕食者によって変わるか調べた。
2003年から2005年の1月~5月にかけ、イエローストーン国立公園の約50 km北西にある、ロッキー山脈モンタナ・マディソン山系で調査を行った。被食者としてアメリカアカシカ(Cervus elaphus,米国名elk)、ミュールジカ(Odocoileus hemionus)、オジロジカ(Odocoileus virginianus)の個体数を地上トランセクトと航空調査から推定した。オオカミの捕食場所等を調べるために、発信器を付け1つの群れを追跡した。ピューマは足跡でモニタリングした。調査中に発見した有蹄類の死体を見に行き、襲った捕食種を特定した。捕食場所における複雑さの指標(CCI:斜度と隠蔽率により算出)を計算し、二元配置分散分析によって時間と捕食種の相互作用を分析した。
調査の結果、3種の有蹄類の中で平均72%を占めたアカシカの個体数がもっとも多かった。アカシカの個体数変動は3年間傾向がなかったのに対し、ミュールジカの個体数は3年間で平均16%増加した。総合的にオオカミがアカシカを、ピューマがミュールジカを多く捕食していた。2003~2005年にかけて、オオカミが捕食した種の割合は変わらなかったのに対し、ピューマがアカシカを捕食する割合は約15%から約40%に増加した。2003~2005年にかけ、捕食場所のCCI値はオオカミでは有意に増加し、ピューマでは一定だった。アカシカは開けた草原を、ミュールジカは急傾斜のビャクシン低木林を主な生息地にしているため、追跡型のオオカミ、待ち伏せ型のピューマにそれぞれ好まれたのだろう。導入されたオオカミに狙われたアカシカは、捕食リスクを軽減するため生息地を草原からビャクシン低木林[複雑さの高い場所]へシフトさせたと考えられる。しかし同時に低木林はピューマによる捕食リスクが高いため、ピューマに捕食されるアカシカが増加したのだろう。
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火入れはクマの食物を豊富にする(2008.10.23; 2008.12.23)
米国のSoutheastern Coastal Plain(南東海岸平野)において、火災はこの地方の景観を形成するのに欠かせないものである。大規模火災の防止、絶滅危惧種の保護などの目的で、人為的にも頻繁に火入れが行われている。火災はアメリカクロクマ(Ursus americanus)を含む多くの生物に利益をもたらすことがわかっているが、1-3年という短期的な火入れがクマにどのような影響を与えるかあまり知られていない。そこで、フロリダ州のEglin空軍基地において、火入れがクマの空間的な生息地利用にどのような影響を与えるか調べた。
10頭のクマを捕獲し発信器を付け、1994年の10月から1996年の11月まで、クマ1頭につき年間64~146回位置測定を行った。24,000分の1デジタル地図や地上調査から生息地の情報を集め、GISに取り込み、生息地の環境を自然マツ林、マツ生産林、水辺地帯、沼沢地、開放地(軍の試験場など)の5種類に分類した。1988~1996年の火入れ情報を地図に重ね、火災後の年数によって地域を分類した。クマの位置情報から個体ごとの行動圏を推定し、その中での各環境と火入れ地の利用を比較した。
クマは総合的に火入れ地よりも火入れしていない地域を多く利用していた。その中でも特に水辺地帯と沼沢地をもっともよく利用していた。自然マツ林やマツ生産林よりも、火災後3年や6~7年の火入れ地の方がよくクマに利用されていた。環境の種類ごとに比較すると、どの環境でも火入れされてない地域がもっとも利用され、その次に3年前と7~8年前の火入れ地が多く利用されていた。
火入れから3年後と6~8年後にクマの利用が多かったのは、クマの食物となる植物が、その時期に果実生産のピークを迎えるからである。火災3年後にはブラックベリー(Rubs spp.)やwild grape(Vitis rotundifolia)、5年後以降にはハックルベリー(Vaccinium globulare)などが生産のピークを迎える。しかし、頻繁な火入れは、クマの主要な食物である堅果類を生産する広葉樹を減少させ、長期的にはクマ個体群に悪影響を与えるかもしれない。特に水辺地帯や沼沢地に隣接した土地での火入れは、他の場所とは区別し、長期的なサイクルで火入れを行い、多様な植物種を維持していくべきである。
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ヒグマの子殺しはオスの適応度を高める(2008.11.14; 2008.12.23)
子殺しは一般的に、子殺しを行った者の適応度が高まる、という性選択説で説明される。性選択的な子殺しには以下の3つの条件が必要である。(1)子殺しは母親の次の発情までの期間を短縮する。(2)子殺し実行者は殺された子の父親ではない。(3)子殺し実行者は母親の次の子の父親になる可能性が高い。社会性哺乳類(霊長類やライオン)では子殺しの性選択説を支持する研究があるが、クマのような社会性のない肉食獣ではほとんどない。そこで我々はスカンジナビア半島のヒグマ(Ursus arctos、以下クマとする)の子殺しが、上記3つの条件を満たすか調査を行った。
スウェーデン北部と、スウェーデン中央からノルウェー南西部の2地域のクマを対象に、ラジオテレメトリーによる野外調査と遺伝学的調査を行った。1988-2001年の長期モニタリングにより成獣と亜成獣への発信器の装着、DNA抽出のための組織採取、追跡を行った。発信器を付けたメスの幼獣を捕獲し皮膚組織を採取した。可能な限り子連れのメスを観察して幼獣の死亡を記録し、子殺し現場に残された体毛などをDNA抽出のため収集した。9つのマイクロサテライト遺伝子座を用いて、殺された幼獣、殺したオス、次の父親となったオスの遺伝子型を比較し血の繋がりを分析した。次の父親になったかどうかは観察によっても決定した。
2地域で合計8例の子殺しがあった。子殺しはすべて繁殖期中に発生していた。幼獣を失った母親は、幼獣が生き残った母親よりも1年以上早く次の幼獣を出産した。DNAサンプルがとれた4例の子殺しをしたオスは、すべて殺された幼獣とは血の繋がりがなかった。他の4例の子殺しをしたオスは次の幼獣の父親となっていた。これらのことからスカンジナビア半島でのクマの子殺しは、性選択説の3つの条件を満たし、オスの適応度を高めると考えられる。この結果は、社会性のない哺乳類でも性選択的な子殺しを行うことを、初めて野外調査で示した。
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クマの有害捕獲は被害の減少をもたらさない(2009.01.23)
人工林、畑、果樹園等で様々な被害をもたらすツキノワグマ(Ursus thibetanus japonicus,以下クマとする)は、防除のため全国で毎年1,000頭以上が殺されている。しかし、クマの有害捕獲と被害の減少との関連を示した研究はほとんどない。そこで本研究では、長野県において、クマの捕獲数と被害額の間に関連があるかどうかを調べた。
15年間(1985~1999年)のクマの捕獲数と、作物・果樹・木材などの被害額データを集め、10の地域レベル、122の地方自治体レベルに分けて解析を行った。地域レベルでは狩猟頭数と有害捕獲数の両方で解析したが、地方自治体レベルではデータが得られなかったため、有害捕獲数のみで解析した。クマの捕獲による被害減少の効果にはタイムラグが生じると考えられるため、当年で関連をみたモデル、前年の捕獲数で関連をみたモデルの2種類で分析した。
各地域では狩猟・防除あわせて、クマの捕獲数は毎年平均16.4頭、被害額は630万円であった。各地方自治体では防除のみのクマの捕獲数は毎年平均0.9頭、被害額は53万円であった。地域レベルの当年のモデルにおいて、クマの捕獲数と被害額は正の相関を示したが、前年の捕獲数をベースにしたモデルでは相関がなかった。これは単に、被害の多い年に多数のクマが捕獲されたという結果を表しているだけだと考えられる。地方自治体レベルでは、当年と前年の両モデルでクマの捕獲数と被害額との間に相関がなかった。以上のことから、地域レベルでも地方自治体レベルでも、クマの有害捕獲は被害額の減少に効果をもたらさないことが示唆された。被害が起こった後クマを捕獲するという現行のシステムは、被害を減らす有効な方法ではないと考えられる。
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都会に生きる方がお得か?(2009.02.21)
都会を作る人間の活動は、大型肉食獣の行動や分布、死亡率などに様々なインパクトを与える。そこで、アメリカクロクマ(Ursus americanus,以下クマとする)の生息地が都会に隣接する地域において、人間活動や生ゴミなどの食物資源が、クマの生活史特性にどのように影響しているのかを調べた。
調査は、米国ネバダ州西部の、シェラネバダ山脈ほか様々な山系に囲まれた調査地で行った。1997~2006年の10年間にわたり、都会地域で12頭、野生地域で10頭のメスグマを捕獲し、ほとんどの個体を死ぬまで追跡した。これらのデータから、繁殖力(メス1頭あたりの幼獣数)、死亡率、有限増加率をそれぞれ求めた。都会地域のクマが10歳までにすべて死亡したため、10歳以上の野生地域のクマはすべて1グループにまとめて分析した。
繁殖力は、野生地域に比べ都会地域のクマの方が高く、4~5歳と8~9歳においてもっとも高くなった。初産年齢も、都会地域のクマが4歳なのに対し、野生地域のクマは7歳であり、都会の方が早かった。死亡率は、0~1歳と8~10歳において、都会地域の方が野生地域に比べて劇的に高くなった(0.5~1.0)。有限増加率は都会地域で0.75と低く、野生地域では1と安定していた[有限増加率=1で安定した個体群となる]。
生ゴミなどの食物資源があるため、都会のクマの方が栄養状態が良く繁殖力も高くなるが、都会では死亡率が高すぎるため、結果として増加率が低くなったと考えられる。この地域では、野生がソース、都会がシンクとして、野生地域から都会地域へとクマが移動する動態があると考えられる。
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オオカミは場所を選んで糞をする(2009.03.20)
オオカミ(Canis lups)は群れで生活し、縄張りをもつ生き物である。オオカミは他の肉食獣と同様に、コミュニケーション方法として、目立つ所に糞などで匂いづけをする。しかし、匂いづけされる植物の形態的特性に関しての研究は少ない。本研究では、効果的な匂いづけを行うため、オオカミが大きい植物や安定した植物を選んで糞をしているかどうか検証した。
調査地はイベリア半島北西部の山岳地で、2003年の5~9月に行った。2つのオオカミの群れの縄張り内で、小道や道路に沿って発見した糞101個を調べた。糞は、オオカミの目線から調査者が見て目立つものと目立たないものに分類し、糞が置かれている植物の直径、高さ、種を記録した。また、生息地内に生育する植物種の割合も調べた。101個中57個の糞については消滅するまで毎月観察し、糞の含有物、植物、標高などによる糞の維持期間の違いを比較した。
101個中75%が目立つ糞であり、糞の置かれていた植物は置かれていない植物よりも高さ、直径ともに大きく、同一植物種内でも同様だった。またオオカミは、生息地によくみられる植物ではなく、量は少ないが目立つ植物を選択していた。糞の維持期間は、含有物が骨の場合長くなるが、植物などその他の影響はみられなかった。オオカミは効果的な匂いづけをするために、時間とエネルギーをかけて場所を選んでおり、その行動は高度に様式化されていると考えられる。
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