◆脳波とGPSで飛んでいるハトが何に注目しているか分かる(2009.07.31)
ハトの帰巣能力は、そのメカニズムについて未だに多くの論争を生んでいる。GPSロガーを使った我々の研究で、高速道路や交差点を目印とすることや、その能力は学習によって獲得されることが示されている。それでも、例えば、鍵になりそうなランドマークを通過したとき、ハトが認知できなかったのか無視すべきだと判断したのかはGPSだけでは分からない。そこで脳波を記録することにより、ナビゲーションに使われるランドマークの認知が脳の電気的変化から読み取れることを証明しようとした。
飛翔中の脳波を記録するために「神経ロガー」を開発し、±5mの精度で毎秒位置を記録できるGPSロガーと併用した。最初に屋外ケージで両目または片目が見えるようにしたハトから脳波を得て視覚刺激に特徴的な脳波を識別した。次に海岸から18km、飼育舎からは30km足らず離れた海上からハトを放すことを繰り返した。海上からの放鳥に十分慣らした後、神経ロガーとGPSロガーをつけてハトを週に1回、3回続けて放してデータを得た。さらに、その結果得られた脳波パターンがランドマークと結びついていることを検証するために、ハトにとってなじみのあるランドマークを通る近距離から放鳥する実験を行なった。この際、他個体への注意が脳波に影響するかどうかを見るために単独だけでなく群れで放す実験も実施した。
目からの刺激は反対側の脳半球の脳波に現れ、寝ている時とも飛翔中とも違うパターンを示した。海上から放した時の飛行速度は時速60-80kmだったので、ロガーは負担になっていなかった。海岸線を通過するとき、12-60Hz(Cバンド)の脳波が顕著なピークを示した。すでにナビゲーションに使っていることが分かっているランドマークを通過するときもCバンドの強さが顕著に増加した。近距離から単独または群れで放鳥したところ、単独個体は群れ個体より有意にゆっくり飛び、どちらでもランドマーク近くでは脳波が強くなったが、群れの方がその程度は弱かった。
この研究は、脳波と帰巣飛行を統合して野外で調べた初めての例である。高周波の脳波における変化を分析することにより、ハトがすでに知っているランドマークだけでなく、方向定位に関連する新たな刺激も識別することができた。
【脳波バンド別の細かい分析結果は省略した。ロガーの写真などの入った付録もオンラインで提供されている。このグループやオックスフォード大によるGPSロガーのみを使ったハトについて研究成果は次々に発表されており、一部は本文献に引用されている。】
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◆スペインで冬を越すカワウは風来坊[松家大樹](2006.03.09)
渡り鳥の中継地における滞在時間は、一般に成鳥は若鳥より短い。一方、中継地への執着は経験を積むたびに強くなると言われている。スペイン内陸のカワウ越冬地において滞在時間と場所執着の年齢との関係を調べるため、標識したカワウの観察した。
観察は、Badajozにあるカワウのねぐらで、2002~2004年の9~3月に少なくとも週に3回、日の入りの3時間前から行った。年齢は標識コードから判別した。その結果、36個体の生誕地と年齢が特定でき、6個体は生誕地のみ特定できた。平均年齢は3.7歳で、大部分は成鳥であった。4カ国8地域からきており、9~12月はフランスから、1~2月はデンマークからの個体が多かった。ねぐらでの滞在期間は平均7日であったが、1日だけの場合がもっとも多く62%を占めた。19%の個体が同じシーズンのうちにこのねぐらを複数回利用した。一年目に見られた27羽のうち5羽だけが二年目も利用した。この5羽のうち4羽は、同じ冬にこのねぐらを複数回訪れた。ねぐらを複数回訪れた個体は、一回の滞在期間が平均17日で、一回しか訪れなかった個体の平均3.2日より長かった。両者に年齢の差はなかった。
これまでの研究では、フランスのカワウはイベリアへ来たとしてもスペイン北部の海岸部に限られていた。本研究はフランスのカワウが内陸イベリアも利用するようになったことを示している。しかし、内陸イベリアの個体はねぐら滞在時間が短い。時期による生誕地の違いはねぐらまでの距離が関係していると考えられる。同じねぐらへの帰還率が低かったのは、内陸イベリアで越冬するカワウは定まったパターンで行動していないためだと考えられる。ねぐらでの滞在期間が長かった個体は、採食地についてより良い情報を持っていたのかもしれない。
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◆白いサギやトキはデコイにおびき寄せられる(2005.08.31)
サギ類やトキ類を巣から離れたところで捕獲するのは難しい。これらの鳥がデコイに誘引されるという先行研究はあるが、いずれも対象種に類似したデコイを使っており、制作の手間や価格面で問題がある。我々は、安価な市販デコイの効果を試した。
米国フロリダ州の保護区内にある8つの池で1997年の10月に実験した。各池の水位や植生は類似しており、50m以上離れた2つのタワーから鳥に影響を与えずに観察できる。次の3種類のデコイと対照区の4つの処理を8つの池に日ごとにランダムに割り当てた。(1)25×38cmの白封筒に紙を詰めたもの、(2)91cm四方の白シートの一部を結んで「頭」を作ったもの、(3)ピンクに塗られたフラミンゴのプラスチック製デコイ。15個のデコイを池の中央部に約1m間隔で日の出前に置き、その後飛来したサギ・トキ類がどれかの池で5羽になるまで記録した。その結果、フラミンゴのデコイが白シートや対照区に比べて有意な誘引効果を示した。白封筒にもフラミンゴデコイと有意差がないほどの誘引効果があったが、白シートや対照区とも有意差がなかった。体色の白いサギ・トキ類は誘引されたが、暗色のサギ・トキ類は誘引されなかった。
白シートよりも白封筒で誘引効果が高かったのは、白封筒の方が三次元的だったからかもしれない。デコイによる誘引はサギ・トキ類の研究に有効な技術となるだろう。
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◆無敵のカラスも西ナイルウイルスに激減!(2005.08.23)
アメリカガラス(American crow, Corvus brachyrhynchos)は、実験室で西ナイルウイルスに感染させると100%の致死率を示し、野外でも1999~2002年に米国全土で5万7千羽以上の死体が報告されている。カラスの長期研究のため1997年から観察を続けてきた米国オクラホマ州の個体群で西ナイルウイルスが侵入して以来の動向を報告する。
カラスはロケットネットで捕獲して標識するか雛のうちに標識し、週に2~4回調査地内を探索した。ウイルスは2002年の9月初めまでに当地に侵入し、その後2ヵ月で120羽の標識個体のうち39羽(33%)がウイルスにより死亡したと推定された。翌2003年のウイルス発生時期である6~11月には、78羽の標識個体中51羽(65%)がウイルスにより死亡したと推定された。18の家族群のうち、無傷だったのは3羽の1群だけだった。死体で見つかった4羽はいずれもウイルスに感染していた。性別やグループサイズによる偏りはなく、各個体の感染は独立して起こり、カラス間の水平感染はないと思われる。
生き残ったカラスが免疫性を獲得したのかウイルスに感染しなかっただけなのかは不明だが、今後数年間で北米のカラスは西ナイルウイルスにより減少することが予想される。当地のアメリカガラスは定着性が強く、非繁殖個体を含む家族で生活しているので、西ナイルウイルスによる個体数の激減は社会構造にも大きな影響を与えるだろう。
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◆アカガエルは種内競争を避けて産卵するか?(2005.02.02)
カエル類では同種幼体(オタマジャクシ)の密度が高まると成長率が低下することが知られている。早春に一時的な水域に1度だけ産卵するニホンアカガエルRana japonicaにおいて、その幼体の生存率が産卵のタイミングや同種の卵塊密度に影響されるかどうかを調べた。
調査地は宮城県の蕪栗沼【に隣接する白鳥地区】にある水田跡地。1999年に2m四方の人工プールを8ヵ所設置し、産卵期に卵塊数と孵化数を毎日数え、変態期に前足が出ている幼体【以下、亜成体】を数えた。回帰分析の結果、実験プールでは卵塊数が多いほど卵塊当たりの亜成体数が少なかった。つまり、卵塊のないプールに産卵したメスの方が高い繁殖成功度を得た。しかし、孵化した幼体数はプール当たりの亜成体数に影響しなかった。2000年には広さが0.2~41.3m2の小さなプール90ヵ所と1,445~3,685m2の大きなプール26ヵ所で産卵を観察したところ、メスは、大きなプールよりも小さなプールでより高密度に産卵した。大きなプールでは、産卵期の終盤を除いて、すでに卵塊のあるプールでより多くの卵塊が追加された。その逆に、小さなプールでは、産卵期の初期を除いて、卵塊のないプールでより多く産卵された。
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