◆スペインでもなかなか複雑なオナガの協同繁殖(2006.04.30)
ヘルパー行動は生態的制約ないしは生活史特性によって繁殖機会の回転率が低下する場合に促されると考えられている。このことを確かめるためには生態的条件や生活史の異なる様々な個体群で詳細な研究が必要である。そこで、社会性のカラス科鳥類であるオナガのマーク個体群における6年間の社会行動の調査結果を報告する。
調査はポルトガル国境に近いスペイン西部のカシ林(Holm oak)で1992~1997年に行った。造巣期に観察された57巣のうち少なくとも19巣で18羽(♂12、♀3、性別不明3)によるヘルパー行動が記録された。抱卵期に観察された126巣では17巣でつがい相手以外の12羽(♂8、♀1、性別不明3)が抱卵メスに餌を運ぶのが記録された。巣内育雛期では110巣のうち54巣(49.1%)で最大9羽のヘルパーが雛に給餌した。ヘルパーのいた巣の方が巣立ち雛数が多く、巣の捕食率が低かった。ヘルパーは幼鳥だけでなく成鳥もいたし、ヘルパーがその後繁殖したり、その逆、あるいは複数の巣で手伝うヘルパーもふつうであった。5年間続いた干ばつの最後の年だった1995年にはヘルパーのいた巣の率も平均ヘルパー数も他の年より多かった。
この個体群におけるヘルパー行動は非常に可塑性が高かった。メスのヘルパーは少なかったが、成鳥のヘルパーはふつうで、造巣期から手伝い行動が見られた。当地では不確実で厳しい気候がヘルパー行動を促しているのかもしれない。ヘルパーと繁殖個体は必ずしも血縁個体でないし、繁殖個体もヘルパー行動を示したことから、血縁選択や繁殖の機会増加は本種のヘルパー行動の説明として不適当である。
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◆捕食リスクが高いと協同繁殖が促進される?(2005.02.23)
捕食圧が高い環境では、ヘルパーにとってはグループに留まる方が安全だし、繁殖者にとっても子の防衛を手伝ってくれるヘルパーの存在がよりありがたいので、協同繁殖が促進されるだろう。タンガニーカ湖に生息するシクリッドの1種(Neolamprologus pulcher)で、捕食圧を操作する野外実験を行った。この魚は、繁殖ペアとその子供であるヘルパーからなる拡大家族で生活し、なわばりを防衛する。
2-3個のなわばりを含む湖底を2m四方のケージで覆い、(1)すべての捕食者を除去、(2)中サイズの捕食魚を導入、(3)大型捕食魚を導入、の3種類の処理を7セットずつ作って、その後4週間の行動や生存率・繁殖率などを調べた。捕食魚には3-5日に1回魚を給餌した。その結果、捕食者除去区に比べて捕食魚導入区では繁殖者とヘルパーの生存率が低く、産出した稚魚数も少なく、ヘルパーはより長くシェルター内に隠れていた。ケージの角に設けた人工シェルターへ「分散」したヘルパーは、除去区でもっとも多く、大型捕食魚導入区でもっとも少なかった。
この研究は、捕食者はヘルパーの分散を減らすという「生態的制約仮説」の初めての実験的証拠である。また、大型~中型のヘルパーの生存率は捕食者に対抗できる成魚の数が多いほど低下したことから、「グループ拡大効果」説も確認された(ただしもっともよく捕食された小型ヘルパーについてはそのような傾向なかった)。
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◆協同繁殖する鳥の脳は大きいか?(2005.01.21)
社会集団で生活する動物は、個体や社会関係の認識を必要とし、それは脳の進化を促すかもしれない。実際、哺乳類では、グループサイズや婚姻形態(mating system)が相対的な脳の大きさと相関していることが証明されている。最近、アメリカ西部にいる2種のカケス類のうち、大きな群れで暮らすマツカケス(pinyon jay Gymnorhinus cyanocephalus)の方が、ほとんどペアで暮らすヤブカケス(western scrub-jay Aphelocoma californica)よりも学習能力が高い、という実験結果も発表された(Bond et al. 2003)。しかし、鳥類における社会性の進化と脳の大きさについての比較研究はない。鳥類では、グループサイズを決めるのが難しいので、ここでは協同繁殖と脳のサイズについて検証した。
対象としたのは、協同繁殖種が多いカラスの仲間【カラス科だけでなく、モズ科やハチクイ科を含む】。155種について、標本や死体から脳のサイズ(体重に対する相対値)を得て、社会構造については文献を調べ、系統関係を考慮して検定した。その結果、1)協同繁殖が記録されているかどうか、2)ヘルパーのいる巣の割合、3)子の世話に関わった個体数【=親+ヘルパー】、のいずれも脳の大きさと有意な相関はなかった。
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