◆間伐で増える鳥、減る鳥(2005.03.19)

北米西部には米マツ(Douglas fir)の若齢林(20-50年生)が広がっており、今後しばらく盛んに間伐される時期である。間伐は、木材生産上必要なだけではなく、森林構造を複雑にするので生態学的にも好ましいとされている。

オレゴン州北部の35-45年生林4ヵ所(25-40ha)それぞれに、中程度の間伐区と強度の間伐区、対照区の3処理区を設け、処理前1年と処理後6年間にわたって鳥類の生息状況をポイントセンサス法で調べた。合計2,940回の調査で19,259回の記録が得られ、うち22種18,399回の記録を分析対象とした。8種は間伐区で対照区より多くなったが、間伐強度に比例して増加したのは、うち2種だけだった。一方、9種は間伐区で対照区よりも少なくなり、うち3種では強度の間伐区でより少なくなった。残りの5種は間伐による明確な影響はなかった。間伐の影響を受けた17種のうち14種の生息状況には6年間で大きな変化はなかった。

間伐は多くの鳥にプラスか特に影響を与えないという点では、既存の研究成果と同様であった。しかし、間伐によって減少した鳥もいた。これらは、キバシリの1種を除いてもっぱら樹冠部を利用する鳥で、また、本来は老齢林に生息する種が多かった。したがって、広域で間伐が行われるさいには、一部に間伐を控える林を残すことが保全上望ましい。

【もともと湿性の針葉樹林帯が広がる北米太平洋岸と日本では自然条件が違うが、「間伐=善」と単純化しすぎてはいけないことを示唆している。ただ、強度の間伐による複相林化の影響については、間伐後もっと時間が経過してから評価すべきかもしれない。】

元の文献

Hayes, JP;Weikel, JM;Huso, MMP (2003) Response of birds to thinning young douglas-fir forests. Ecol. Appl. 13:1222-1232. [#19876]

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◆森で水を治められるか?(2005.03.17)

この本は、ダム反対派とダム推進派がそれぞれの主張をかなり専門的に解説しているユニークな本である。著者は、森林生態学や水文学の研究者、行政側の専門家、市民運動家など、なかなか豪勢。全体を通して、「緑のダム」をめぐって今日何が問題となっているのかが理解できる。森林の洪水緩和機能は、大雨の前に土壌がどの程度水を含んでいるかによって大きく変わることや、森林は植物の蒸散を通して水を消費するので渇水時の水量を減らすことがある、といった、当たり前だけれどもついつい忘れがちなことにも気付かされる。ただし、かなり専門的な内容も含んでいて、一般読者にはやや難解なところもある。

【「緑のダム」論の難しさを改めて感じた。ダムや河川改修を計画する根拠となる「基本高水流量」の算出では森林の洪水緩和機能は織り込み済み、といった国交省の立場には納得できないが、かといって、森林を適切に整備すればダムは不要になる、というダム反対派の主張には十分な根拠がない。確かにさらなる科学的な検証は必要だろうが、ちょっとピントがずれていないか心配だ。同じ出版社から1996年に出た『アメリカはなぜダム開発をやめたのか』を改めて斜め読みしてみると、かの地では「緑のダム」に類する議論はほとんどなく、河川環境や原住民の生活を破壊することや、投資に対してメリットが限られていること、いくらダムを造っても洪水は防げないこと、などが路線変更の主たる理由のようだ。】

【ここ井川は、中部電力のダムのおかげで生活が成り立っているような地域だが、本来清流であったろう大井川は見る影もない。大井川は井川の上流も下流もダムだらけ。演習林内でも、渓流を何カ所も横切る堰堤が、こちらは林野庁の治山事業で作られている。一方、森に入ると、広葉樹の林でも樹齢数十年の壮齢期にあるものが多く、下草はなく、土壌も薄い。森があろうがなかろうが、各所で土砂崩れが発生する。何が本当なのか、模索の日々。】

元の文献

蔵治 光一郎・保屋野 初子(編)(2004) 緑のダム.築地書館.260頁.本体2600円[#19903]

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