町中のペンギン個体数はフェンスではなく餌によって制限されている(2009.08.04)
ケープペンギン(Spheniscus demersus)は、1980年代にケープタウン近くの海岸2ヵ所とRobben島で繁殖を始めた。これは、カタクチイワシの1種(Engraulis capensis)の減少により最大のコロニー(Dyer島)が崩壊した時期と一致している。海岸2ヵ所のうち1ヵ所はヒョウやカラカルによる捕食でなくなってしまったが、もう1ヵ所のBoulders Beachでは1985年の2ペアから2003年の1,000ペア以上にまで増えた。一方、そこから40km離れたRobben島では2002年には7,000羽以上にまで増えた。Bouldersコロニーは居住地に囲まれているために地上性の捕食者から守られており、年間40万人もが訪れる人気スポットとなっているが、地域住民とのあつれきも生んでおり、居住地や海岸に繁殖地拡大を防ぐフェンスが設けられている。その成果か、近年では個体数増加が止まりつつあるが、ペンギンの繁殖数はカタクチイワシの量と連動していることから、餌による制限が働いているのかもしれない。そこで、GPSロガーと時刻・深度ロガーを使って、Bouldersコロニー、および同じ地域にあって海岸から50km離れた2つの島(Dassen島とRobben島)のコロニーでペンギンの採食努力を比較した。
ロガーは2003年の繁殖ピーク期に雛を抱いている親の背中にテサテープで取り付け、1回のトリップから帰ってきたら回収した。GPSのサンプリング間隔は、Bouldersでは1秒から10分まで試したが、島のコロニーではすべて1分とした。ロガーの重さは75g(体重の2.5%)だった。
Bouldersから20個体、Robben島から10個体、Dassen島から4個体の位置データ、また、それぞれ22個体、11個体、3個体から深度データを回収できた。餌を調べたBouldersとRobben島ではどちらでもカタクチイワシが主要な餌だった。大部分の潜水は昼間だったが、Bouldersでは3.1%とRobben島よりも有意に多くの夜間潜水が見られた(3.1% vs. 0.5%)。Bouldersでは島よりも平均で1時間半早く採食に出発し、1時間以上遅く戻ってきた結果、トリップ時間は2.9時間長かった(13.2時間 vs. 10.3時間)。採食地の範囲も総移動距離も、Bouldersではそれぞれ18.5kmと46.4kmに対して島では33.2kmと9.4kmであった。潜在的な採食面積[=海面面積]はコロニーからの距離に応じて大きくなるが、その程度は、地形的な制約から、島よりもBouldersで小さかったが、採食距離が長いため、面積としてはBouldersで4002と島の250km2より広く、繁殖ペアあたりでは、Bouldersでは40haに対してRobben島では3.6ha、Dassen島では1.2haであった。
Ashmole (1963)の仮説によれば、コロニーが大きいほど採食努力が増えるはずであり、様々な実証研究で支持されてきた。しかし、本研究では、個体数の少ないBouldersで採食範囲がより広く、採食努力が大きかった。このコロニーが面しているFalse湾は遊泳性魚類の集中する海域からは外れている。このことがBouldersコロニーの成長を止めていると思われる。
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餌のイワシが減ったら漁業残渣を利用するも完全には補完できず?(2009.08.03)
バイオテレメトリー技術の急速な進歩のおかげで海鳥の研究は現在急成長しているが、採食行動と餌の分布の両方を同時に調べた研究はほとんどない。漁業は海鳥の餌資源を取り尽くしてしまうことがあるが、一方で、膨大な量の残渣(fishery discards, fish waste)を出し、多くの海鳥がそれを餌と利用している。我々は、アフリカ南部に固有な大型海鳥であるケープシロカツオドリ(Morus capensis)について、自然の餌と漁業廃棄物という異なる餌資源に依存している2つのコロニー間で採食行動と餌資源の分布を比較した。
ケープシロカツオドリは、世界有数の生産力を持つアフリカ南部沿岸の6つの島で繁殖している。このうちアフリカ最南端のアガラス岬を挟んで800km以上離れた2ヵ所、Malgas島とBird島を調査地とした。どちらも約6.5万羽が繁殖し、この2ヵ所で本種個体群の80%を占める。Bird島では1950年代以降個体数が増加傾向にあるが、Malgas島では1996年まではゆっくり増加していたものの、最近では減少している。2005年の10-11月に各コロニーで小さな雛を持つ親鳥を30羽ずつ捕獲してGPSロガーと深度ロガーをテサテープで尾羽の付け根に装着した。偽反復を避けるために1羽につき1トリップ[採食に出てコロニーに帰ってくるまで]分だけデータを取るようにした。その他、対照個体として10羽を捕獲せずに染料でマークして5トリップ分のトリップ時間を記録した。主要な餌であるイワシ(Sardinops sagax)とカタクチイワシ(Engraulis encrasicolus)の量と分布については、海洋沿岸管理局が魚探で魚密度を推定し、水中トロールで魚種とサイズ分布を調べた。
両方の島からそれぞれ27トリップの完全なGPS軌跡が得られ、潜水活動についてもMaglas島で7トリップ、Bird島で14トリップから完全なデータが得られた。どちらのコロニーでもロガー装着個体と対照個体の間でトリップ長に違いはなかった。Malgas島のカツオドリは、トリップ長がより長く、飛行距離も長く、より多くの餌(361g vs. 213g)を1回に持ち帰ったが、運んだエネルギー量には有意な違いがなかった。採食範囲内での自然の餌量は、Maglas島ではイワシ7.2gとカタクチイワシ18.0g/m2に対して、Bird島ではそれぞれ17.0gと15.0g/m2であった。餌は、Maglas島ではトロール漁の主要対象種となっているメルルーサ(Merluuccius paradoxus)が78%を占めたのに対して、Bird島ではイワシが73%を占めた。
この研究から、カツオドリは海洋環境の変化に応じて採食努力量を増やしたり、トロール漁船の後ろで漁業残渣を得るというように適応しているが、漁業残渣(メルルーサ)は脂分が少なくエネルギー密度が低いため、結局雛に回せるエネルギー量としては自然の餌を得ている場合より少ないことが分かった。この低い採食効率がMalgas島での個体数減少の根本的原因と思われる。
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ガラパゴスペンギンは岸近くの浅いところで採餌する(2009.07.04)
ガラパゴス諸島の固有種であるガラパゴスペンギン(Spheniscus mendiculus)は、推定個体数が2,000羽程度であり、IUCNによって「絶滅危惧」(EN)に分類されている。 沸昇流や大陸棚の非常に生産的な環境においてイワシ類などを捕食する。我々は、GPSと深さの記録計(GPS-depth loggers、以下ではGPS・深度ロガー)を付けることにより繁殖中のペンギンの採食範囲を調べた。
調査は2004年5月から2005年5月にイザベラ島の3つの繁殖コロニー行われた。抱雛中のペンギンを投げなわや脚フック、または手で捕獲し、体重や各部を測定し、遺伝的性判定のための血液サンプルを採取した。背中の中央にはテサテープで重さ75gのGPS・深度ロガーを装着した。ロガーは捕獲翌日の5:00にスイッチが入り、位置(水面上にいる間のみ)と深度を毎秒記録し、約12時間作動する。1-3日後に捕獲してロガーを回収した。深度は専用ソフトで、GPSデータはArcViewで解析し、統計解析にはRの線形混合効果モデルを使った。
23羽(11♂・12♀)にロガーを装着した。12羽は1雛、11羽は2雛を育てていた。23羽のうち21羽から有効なGPSデータを取得できた。失敗した2例は、巣を離れなかったのが1例、プログラムのエラーによりデータが取れなかったのが1例だった。12個体分のみが採食トリップ全体についての情報を記録しており、潜水データについてはこれらの個体分だけを使った。他の8例[9例の間違い?]では採食トリップが終わる前に電池が切れた。巣からの最大距離の平均は、5.2km(1.1-23.5km)だった。性別でも雛数でも距離に違いはなかったが、コロニーによる違いは有意であった。海岸からの最大距離の平均は0.9kmで、採食が海岸近くの水深50mより浅いところで行われていることを示した。ペンギンは05:11から05:48の間にコロニーを出て、平均で8.4時間後にコロニーに戻った。この時間については、性別・コロニーの場所・雛雛のいずれでも違いがなかった。最大水深は52.1mだったが、全体の平均は3.0mと浅かった。
体重を考慮しても、他のペンギン類に比べて採食範囲は狭く、深さも浅く、沸昇流の一部しか採食地として利用していなかった。これは、ガラパゴスペンギンの主要な餌であるイワシ・カタクチイワシ・ボラの幼魚は、いずれも沿岸域で群れを作る魚だから、と考えられる。また、この研究が行われた時に餌が豊富で、ペンギンたちは遠くへ採食に行く必要がなかったのかもしれない。しかし、これほど沿岸部に偏った採食範囲は他のペンギン類には見られず、餌による制限以外の要因が作用しているのかもしれない。
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コガタペンギンは防波堤や航路の人工物をうまく活用している(2009.06.22)
海洋における人間活動の影響は、陸上に比べて目立ちにくいが、特に沿岸域ではしばしば広範囲に及ぶ。衛星追跡や深度ロガーといった新技術によって移動性の動物に対する人間活動の影響を把握できるようになってきた。コガタペンギン(Eudyptula minor)は、育雛期には比較的狭い範囲で採食して巣に戻るため、ロガーの装着と回収が容易である。普通種とされるが、一部地域では哺乳類の捕食者と生息環境の損失による悪影響を受けている。メルボルンから5kmの町にある防波堤上のコロニーは、1974年に初めて繁殖が確認されてから1,000個体まで増えてきた。我々は、人為な改変を受けた海洋における繁殖期のペンギンの採食戦略を衛星追跡と時間・深度ロガーを使って調べた。
2006-2007年の繁殖期に週3回繁殖状態を点検し、ペンギンに動物用マイクロチップまたはフリッパーバンド(翼帯)を付けた。このコロニーのペンギンは、平均水深13m、最大水深24m、広さ1,950km2のポートフィリップ湾内で採食する。湾内には深さ12–17m、幅180–240mの航路がいくつかある。コガタペンギンは体重約1kgと小さいので、衛星追跡と深度ロガーは別々に用いた。衛星用発信機は(43g)は育雛前期の13羽、深度ロガー(14g)は抱卵期ないしは育雛前期の14羽の背中にテサテープNo.4651と接着剤で装着した。位置精度が1kmより良い衛星データのみを解析に用いた。
衛星追跡により11羽から98地点の採食地データが得られた。ペンギンは湾内の222個の1km2グリッドで1分から668分を過ごした[移動途中も計算している]。採食トリップ中の42%の時間を航路上ないしはその隣のグリッドで過ごした。日帰りの採食トリップではコロニーからの最大距離の平均は13.8kmであった。1例だけあった2日間の採食トリップでは、コロニーから51km離れたところまで採食に出かけていた。深度センサーは、繁殖を放棄した4例を除く10個体から回収し、48採食日・32,690回の潜水についてデータを取り出した。このコロニーでは57%の巣で巣立ちまでに放棄が起きたことから、4例の放棄はロガー装着の影響ではないだろう。平均潜水深度は8.4m、最大は26.5m、平均潜水時間は28.5秒、最長は79秒だった。潜水のうち85%ではbottom phase(潜水中に垂直方向の移動が秒速0.25m以下の期間[つまり採食中と思われる時間])が見られ、その多くがもっとも深く潜ったときに起きていた。海底近くで採食していたと思われる248回のうち180回では深度が激変する航路を使っていると思われた。
近年のペンギン研究では位置と潜水データを同時に得るのが普通だが、残念ながらコガタペンギンに適用するにはまだ機器が大きすぎる。しかし、深度データを取った個体の採食エリアは、位置データを取った個体と同じく、湾内の北部と西部、つまり航路のあるエリアと考えてよいだろう。ここのコガタペンギンは、餌のほとんどをカタクチイワシに頼っている。航路の地形を活かして餌を追い込んで採食していたものと思われる。ここのコガタペンギンは営巣地でも採食地でも過去の人為的改変によって利益を受けているが、現在計画されている、航路を深くするための浚渫では、濁りがペンギンや餌であるカタクチイワシにマイナスの影響を与えることが懸念される。
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抱雛期のアホウドリは近場で採餌する(2009.05.26)
衛星追跡によって、アホウドリ類は湧昇流のあるところなど海洋表層で効率よく採餌できる場所を集中的に利用していることが明らかになってきた。こうした生息地利用はメソスケール[ふつう1,000km程度を指す]で研究されてきたが、海洋の時空間的変動に対する反応をより細かいスケールで調べるには近年実用化されてきたGPSの方が向いている。とりわけ、雛を保護するために採餌距離が制限される抱雛中(孵化後数週間)のアホウドリを調べるには10km未満のスケールが望ましい。この論文では、抱雛期のガラパゴスアホウドリ(Phoebastria irrorata)の採餌について、場所、性別、昼夜による違いを検証する。
2003年にガラパゴス諸島のエスパニョーラ島にある繁殖地で抱雛期の4週間に調査した。66gのGPSロガーをテサテープで背中の羽毛に、また浸水センサーを足環に付けた。装置の重さは体重の1.5-2%だった。GPSは1時間に1回位置を記録するようにした。5羽からは2回、16羽からは1回ずつの雌雄各13回ずつの採餌トリップについてデータが取れた。海水面温度とクロロフィル濃度についてはNASAの4km精度の衛星データを取得し、雲の影響を除くために8日ごとにまとめた。データはArcView 3.2上でanimal movementエクステンションなどを使って、最大採餌距離内、実際の採餌地域内、そしてGPS軌跡の3つのスケールで解析した。
1回の採餌トリップの長さは平均99.4時間(19-273時間)、距離は平均299.3km(65-650km)であった。GPS位置の92%は水深600m未満の浅い海域で、平均水深は391mであった。採餌に使った地域は、使わなかった所に比べて浅く、水温がやや低く、クロロフィル濃度が高かったが、水深以外の効果は小さかった。性別による採餌行動や採餌場所の違いはなかった。採餌と飛翔は日中に多く、夜間には遊泳ないし休息が多かったが、満月前後に夜間活動が高まった。
GPS装着個体の採餌トリップは非装着個体よりも有意に長かったが、特にストレスを示すような行動は確認されず、繁殖成功率にも違いはなかった。抱雛期のアホウドリはもっぱらエスパニョーラ島から100km以内で採餌していることが分かったが、繁殖地からもっと遠くて湧昇流を生じている海域で多数のアホウドリが観察されている。この矛盾は、雛が大きくなれば親鳥がもっと遠くまで採餌に行くのかもしれないし、海上で観察されている個体の多くが非繁殖鳥なのかもしれない。この疑問に答えるためには非繁殖個体についてもデータが必要である。
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ヨーロッパのカワウにおけるコロニー間移動(2009.04.08;2009.05.02)
集団繁殖する種の個体群動態は、各集団繁殖地(コロニー)における繁殖・生残とコロニー間の移動の相互作用で決まる。繁殖と生残に比べてコロニー間の移動分散については研究が進んでいない。この論文では1981-1993年の個体数増加期に32-234km離れた6コロニーで得られた標識個体の繁殖試行の記録(resightings)と死亡確認(recoveries)のデータから生残率や新規繁殖参入、コロニー間の移動についてモデル化した。カワウは、デンマーク全体で1970年には250巣だったのが、1994年には37,800巣にまで増加し、その後39,000巣前後で安定している。
1973年以前からある古い3コロニーと1982年以降にできた比較的新しい3コロニーで計14,018羽の25-38日齢の雛に足環(金属と番号付カラーリング)を装着してきた。これら6コロニーで生まれた1,720個体による3,339回の繁殖の試みを確認できた。一方、巣立ち後に死亡を確認した1,939例の地理的範囲は、北はイギリス、南はアルジェリア、西はスペイン、東はルーマニアという広い範囲に及んだ。Labreton et al. (2003)の方法(multistate capture-recapture model)を拡張したモデルをこれらのデータに適用して、個体の状態を出身コロニー(6通り)と繁殖か非繁殖かの組み合わせ、および新規死亡と調査範囲外での生存という、計14通りの状態に分けて分析した。
調査した6コロニーはデンマーク国内ではもっとも大きく、1981年には国内にはこれら6コロニーだけで、1993年には全国で30コロニーに36,396巣が確認されたが、うち59%がこれら6コロニーで占められた。この間、デンマークの個体数は年率24%で増加した。年生存率は生後1年目では0.50で、繁殖個体は0.90であった。出身コロニーで繁殖する率にはコロニーによって大きな変異があり、新しいコロニーの方が古いコロニーより高かった(0.79 vs. 0.55)。一方、繁殖個体は同じコロニーで再び繁殖する率が高く、コロニーの新旧間では差がなかった(0.86 vs. 0.85)。雛数はコロニー・年のいずれでも有意な違いはなかった。特に初めて繁殖した個体は、そこでの平均雛数が多いと翌年も留まる確率が高かった。1982-86年に5,500雛が駆除されたあるコロニーでは、繁殖経験個体の移出率が他より高かった。その結果、空いた巣場所が多くなり、移入率も非経験個体の参入もそこそこ高かった。
繁殖経験個体は、たぶん採食地の経験を活かすため、高密度のコロニーでさえも定着率が高く、もし分散する場合でも近くのコロニーを選ぶ。一方、初めて繁殖する個体には時間が十分にあるので、繁殖を始めるべきコロニーをもっと広範囲に探すのであろう。我々のアプローチはカワウのコロニー間移動に影響する環境および個体群構造をよりよく理解するために有益であり、カワウのような問題を起こす種の管理計画に役立つだろう。
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卵のオイリングによる繁殖抑制は卵捕食を通してウの繁殖分散を招く(2009.02.24;2009.05.02)
保護管理は生息地の質の変化を通して移動分散も変えるかもしれない。一つの例が急速に拡大しているミミヒメウ(Phalacrocorax auritus)個体群である。チャムプレイン湖では現在4コロニーで4,200ペアが繁殖している。州と連邦政府は1994年から積極的なミミヒメウ管理を始めた。最初は新しいコロニーができるのを阻止するために巣を除去していたが、1999年からは個体群への新規加入を減らすためにオイリングを始めた。オイリングの際にはミミヒメウが飛び立つため多くの卵がカモメに捕食される。オイリングをしたコロニー(Young Island、以下YI)では2年間で1,759ペア(58%)が減少したが、もう一つの大きなコロニー(Four Brothers Islands、以下ではFB)では1,065巣(78%)増加したほか、周辺にも新しいコロニーができ、全体ではYIでの減少数の80%に相当する個体数が周辺で増加していた。そこで、1) オイリングは翌年の分散の増加を招く、2) 卵の捕食は分散を増やす、3) 分散率は二つの大きなコロニー間で違う、という3つの仮説を検証するため、4年間の標識-再捕研究を2つの大コロニーで行った。
成鳥の生存率は2つのコロニー間で違わないと仮定し、見かけの生存率の違いは分散の違いによると解釈した。YIでは、一部でオイリングをして残りはそのままにしておくという実験を2001年から2003年に行った。YIを10×10mのブロックに分けて、1) オイリングあり、2) オイリングなし、3) オイリングの有無を年によって切り替えるという3種の処理をランダムに割り振った。オイリングなし区でもコロニーに侵入して卵数を数えたので、撹乱は同じである。2002年には2回のオイリングのうち1回を、2003年には2回とも夜間に実施してカモメによる卵捕食を減らした。また、主に夜間に2つのコロニーで計254羽の成鳥を捕獲して足環を装着し、その後2004年まで繁殖している装着個体を探索した。338回の再確認データを元に生存率・再発見率・移動率を計算した。
何も管理されなければFBからYIへ移るミミヒメウの方がその逆より多かったから、YIの方が質の高い繁殖地と考えられる。オイリングは非実施コロニーへの移動を増やしたが、その効果は小さかった(3%)。一方、オイリングの際に捕食が多いとYIからFBへの移動が大きく増えた(20%)。移動はほぼチャムプレイン湖内のコロニー間に限られていた。効果的な保護管理を進めるためには、かく乱中の捕食を招かないように夜間にオイリングをし、コロニー内の一部ではオイリングを実施しないようにするのが良い。そうすれば、ミミヒメウは、期待される繁殖成功度はオイリングによって低いにもかかわらず好適な繁殖地と認識して留まるという「生態的わな」(ecological trap)にはまってしまうだろう。
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サギ類繁殖コロニーごとの採食範囲をいかに求めるか(2008.12.04;2008.12.22)
採食地と営巣地(コロニー)が大きく離れている集団繁殖性の動物では、採食地を別コロニーの個体と共有したり競ったりするかもしれない。隣接コロニー間における採食範囲の重複なども興味深い課題である。しかし、採食範囲を個体ごとの行動範囲から割り出すことは事実上不可能である。理論的には、採食地として利用される頻度はコロニーから遠くなるにつれて低下する。この関係とコロニー規模から採食個体のコロニーを確率的に割り出すことができるかどうかをダイサギ(Ardea alba)で調べた。
調査地はオーストリア東部のNeusiedl湖周辺の640km2の範囲である。13ヵ所にあるコロニーのうち6ヵ所について2000年の4-7月にサイロややぐら上から採食地への飛行を771回追跡し、71%(487回)で採食地へ降りるのを確認できた。同じ期間に軽飛行機で9回飛行し、ダイサギの採食地を2,885地点記録した。コロニーからの飛行データを元に距離別利用頻度を求めたところ、遠くなるほど利用頻度は指数関数的に減少した。これに各コロニーの個体数を加味したコロニーへの所属確率にランダムなコロニー選択を組み合わせて100回のシミュレーションを行い、航空調査で観察された採食個体の所属コロニーを推定した。さらにその結果を元に、カーネル法によって各コロニーの「行動圏」を推定した。
このような推定をしなくても700回以上もあるコロニーからの飛行データを使えば行動圏を推定できるように思えるかもしれない。しかし、途中で見失ってしまったケースが29%あるので、行動圏を過小評価してしまうだろう。距離と利用頻度の関係は単純な指数関数であったのに対して、推定された行動圏は水域とヨシ原が入り組んだ地理的条件を反映したものとなっているのは、前者では方向の情報を使っていないためと考えられる。最適モデルによると距離と利用頻度の関係は線形になるという先行研究があるが、本研究では指数関数的に減少した。これは、ダイサギが他個体に引き寄せられたためかもしれない。
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北米のオオアオサギはダイサギよりも大きな湿地を採食地として好む(2008.12.02;2008.12.22)
集団繁殖性の水鳥にとってコロニー近辺の採食地の質は繁殖地の健全性を表す重要な側面の一つである。オオアオサギ(Ardea herodias)とダイサギ(Casmerodius albus) [Ardea alba]の採食地選択の仕事はこれまで沿岸部や大きな湖の周辺で行われてきたが、様々な湿地要素がモザイク状に分布する地域では研究例がほとんどない。米国ミネソタ州ミネアポリス近くの都市部にあるコロニーにおいて採食地の選択を調べた。
1998年の5月1日-6月15日に、週1回のペースで小型航空機を使ってコロニーから飛び立ったサギを最初の採食地まで追跡した。採食地を確認したらコロニーに戻って別個体の追跡を午前中と午後に2-3時間繰り返した。環境については、湿地目録とGISを使って湿地[wetland、湖・池等を含む、以下同じ]ごとに水面面積を求めた。採食地は、水面面積10ha以上の「湖」、10ha未満の「池」、浅い水域と植生がある「湿原(marsh)」、河川・水路に分けた。
追跡できたオオアオサギ63個体中27個体はコロニーのある湖で採餌し、距離別個体数は1km未満がもっとも多く、採餌飛行距離の中央値は2.7km、最大距離は15.3kmであった。ダイサギでは湖で採餌した個体はなく、23個体の中央値は13.5km、最大距離は30.3kmであった。飛行時間の中央値は、オオアオサギで4.9分とダイサギの20.0分より短かった。採食地の環境については、オオアオサギの76%は湖を選択したのに対して、ダイサギの65%は池を選択した。オオアオサギは30kmスケールでも4kmスケールでも201-400haの湿地を理論値より多く使った。ダイサギは、30kmスケールでは湿地サイズに選好性は見られなかったが、4kmスケールでは0-100haの湿地を理論値より多く使い、それ以上大きい湿地は避けていた。飛行距離については他の研究例とほぼ一致しているが、湿地面積の選好性はこの地域の環境特性によるものと考えられる。種間の違いは種間競争を回避している結果かもしれないが、そのことを証明するには片方の種しかいない地域での環境選択を調べる必要があるだろう。
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何千キロも飛んだ先で集中的に餌を探す海鳥(2008.07.31)
環境に変異があれば動物は資源が豊かなところで速度を落としたりする局所的探索(area-restricted search, ARS)を示すはずで、その際の空間スケールは、採餌戦略を理解する上で重要である。スケール分析では、ある半径の円内を横切るのに要する時間(first-passage time, FPT)がよく用いられるが、資源分布がきわめて変異に富む海洋環境に当てはめた例はほとんどない。また、海洋鳥の多くが「拠点往復採餌」(central-place foraging)をするので、距離による制約も重要な役割を果たすだろう。ここではキバナアホウドリ(Thalassarche carteri)の採食行動からこれらを検討する。
南インド洋の島で2000年と2002年の抱卵期にアルゴスシステム用の衛星発信機(32g)と水への出入りを記録する乾湿ロガー(12g)を計26羽に取り付けた。抱卵期には親鳥は10-20日に1回抱卵を交代する。まずコロニーからの距離と20km四方のセル内での滞在時間の関係を示す3次式を求め、これをもとに生息地の選択性を分析した。さらに、20-1000kmの半径におけるFPTを各アホウドリの通過コースについて2kmごとに計算し、変異が最大になるスケールをARSとした。最後に、求めたARS単位でもっとも長く滞在した場所を「重点探索地域」と定義した。海洋環境については、海底地形図・水面温度・水面変異(surface height anomaly)・クロロフィル活性についての月ごとのデータを利用した。
1回の採食トリップは平均で17日、コロニーからの平均最大距離は1800kmだった。26個体中22個体でARSが見られ、うち11個体ではより小さいスケールでもARSが現れた。前者についてはARSの平均は77kmで、後者の場合、大スケールでは180km、小スケールでは34kmだった。アホウドリは海底地形では大洋上を好み、水温では亜熱帯水温を好んだ。大スケールのみでARSを示した個体は海水面が高い場所を避け、クロロフィル活性の高い場所を選んでいた。2段階でARSを示した個体は、小さいスケールでのみ海水面の高い場所を避けたが、クロロフィル活性の高い場所については逆に大きいスケールでのみ選択していた。この研究は、拠点往復採餌型の捕食者が環境特性に対してスケール依存の調整をしており、そこには個体差があることを初めて示した。
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発信機付きエトピリカの子は死亡率が高く成長も遅い(2008.07.30)
電波発信機などを使った研究では装着した個体から得られたデータは偏っていないと仮定されるが、実際には繁殖行動の変化や放棄が多数報告されている。エネルギーコストの増加は、ウミスズメ類(Alcids)のように小さな翼で早く羽ばたいて飛ぶ海鳥には特に重要な問題である。我々はエトピリカ(Fratercula cirrhata)の採食生態を研究する一環で25羽に発信機を付け、雛への悪影響を検証した。
アラスカ南部のChiniak湾にある3ヵ所のコロニーで雛の成長と巣立ちの成否をモニターした。2003年の繁殖期(抱卵期の最後~育雛期)に巣穴にいる親を捕獲し、発信機を皮下固定具と接着剤で背中に着けた。7.5gと9gの2タイプの発信機を用いたが、いずれも体重の1.2%未満であった。対照とした55巣の親はいっさい捕獲しなかった。巣穴にアクセスしやすいように掘って平たい石や合板を置き、定期的に雛の体重を測った。
発信機を着けた25羽のうち23羽は少なくとも1回はコロニー内で見つかった。しかし、48%は装着後15日間以上見つからなかった。営巣に失敗した18個体のうち6羽は失敗の前、9羽は失敗の後に確認されている(3羽は前後不明)。雛の成長速度は、発信機付きの親で対照の親より悪かった(1日あたり平均で6.9g対14.4g)が、巣立ち時の体重には違いはなかった。ペアあたりの巣立ち雛数も発信機個体のいるペアで低く(0.33羽対0.84羽)、巣立ちまでにより長くかかった。
エトピリカでは発信機の装着は繁殖に悪影響を与えていた。これは親の死亡によるのではなく、発信機個体が雛への給餌を減らしたり繁殖を放棄してしまうことによっていた。また、巣立った巣でも巣立ちまでに長くかかっていた。こうしたことから発信機を使う研究には慎重であるべきだ。ただ、我々は対照個体を捕獲しなかったので、こうした悪影響は捕獲とハンドリングの影響だった可能性は残る。
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鳥用データロガーは本人にもパートナーにも負担(2008.07.30)
両親で子育てする動物ではペアの一方を除去したりハンディキャップを負わせたりする実験が行われてきたが、パートナーの反応は繁殖放棄から完全な補完までいろいろである。これらの研究の多くは単独性のスズメ目鳥類を扱ってきた。一方、海鳥類の研究では様々なデータロガーが駆使されている。ロガー装着個体では採食時間が長くなったり巣の訪問頻度が減ったりするという報告もあるが、違いがなかったという報告もある。我々は、時間と水深を記録するロガーが育雛期の親とそのパートナーに与える影響をハシブトウミガラス(Uria lomvia)を使って調べた。
調査地はカナダ北東部ラブラドール地方の150ペアが繁殖するコロニーである。62ペアについて2000-2003年に繁殖をモニターし、うち18オスと22メスにロガーを装着した(1ペアにつき1羽、データが取れたのは16オスと19メス)。ロガーは25gと16gの2種類(いずれも体重の3%未満)で、Tesaテープと瞬間接着剤で背中の中央に着けた。1-4日後には再度捕獲してロガーを外し、体重を測り、性別判定用の血液を採取した。このほかに対照として13オスと13メスも同様に捕獲して標識や血液採取を施した。捕獲には輪なわ付きの棒を使った。
ロガー装着個体は、特にオスで、対照個体よりも体重が大きく減少した。ロガー装着個体では雛への給餌回数は半分以下になり抱雛時間も減ったが、育雛期間には差がなかった。ロガー装着個体のパートナーは、対照個体よりも多く餌を運んだ。また、ロガー装着中とその前後で比較すると、装着中にはやはりパートナーの給餌が増加したがペア合計ではやや低下した。巣立ち成功率にはロガー装着ペアと対照ペアで差はなかった。翌年同じコロニーで繁殖した率は、ロガー装着個体では対照個体より有意に低かったものの、パートナーには差がなかった。翌年にはロガー装着ペアの32%でパートナーが代わったが、対照ペアでは代わった例はなかった。
結論として、ロガー装着はその個体の給餌行動と翌年の帰還率のはっきりした低下を及ぼした。そのパートナーは、1回に1雛のみを育てるというウミガラスの生活史においては、給餌量をほぼ完全に補完すべく繁殖努力を増やしていた。その結果、1回ごとの繁殖成績には違いがなかった。ロガー等の影響を調べたこれまでの研究には、測定対象が繁殖成績のみであったりと不適切なものもあったのかもしれない。
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ウが魚を食べずに傷つけることがどれほどあるか(2008.07.29)
世界で30種以上いるウ類のうち沿岸域から淡水域で魚を捕るカワウ(Phalacrocorax carbo)とミミヒメウ(P. auritus)が漁業に被害を与えていると非難されている。ヨーロッパと北米の漁業者は、これらウ類の害は大量の魚を食べるだけではなく、多くの魚を食べることなく傷付けることにもあると主張している。そこで、この2種について水中ビデオで捕食行動を調査した。
カワウについては、中国河北省の漁師(鵜飼い)の協力を得て、6羽の慣れた個体にサンヨー製ビデオカメラ(総重量240g)をハーネスで背中に付けて1回につき10分間採食させた。カワウは首輪を巻かれているので、ときどき小舟にいる漁師のもとへ戻って食道に貯まった獲物を出した。実験は、3つのサイズクラスのコイ科魚類を導入した養殖池で実施した。ミミヒメウについては、雛から育てた2歳以上の9羽を用いてカナダのブリティシュコロンビア大学構内で実験した。直径5m深さ10mの水槽に8個のビデオカメラを置き、ニジマスを15-20匹入れて、ミミヒメウを1羽ずつ入れて30分間採餌させた。
カワウは1羽につき6回ずつ計36回の実験で158回魚を追い、63%で成功した。成功率は魚の大きさ(100g未満vs.500g以上)で違わなかった。失敗した70回の大部分では魚に触ったかどうかを判定できなかったが、つかんだ魚に逃げられたケースが2回あり、いずれも500g以上の大型魚だった。ミミヒメウでは計82回の実験で518回魚を追い、58%で成功した。うち6回は捕らえた魚に逃げられたが再度捕食した。一方、失敗のうち魚に接触したのは2回だけで、残りの241回では魚に届かなかった。
今回の研究は様々な限界があり、最初の一歩と捉えるべきだが、2つの新たな知見をもたらした。一つは、追跡の約半分で捕食に失敗しているということだ。これは採食時間を切りつめる代わりに非常に成功率が高いと言われてきたウ類の採食戦略とは一致しなかった。二つ目は、ミミヒメウの場合、魚を食べずに傷つけたのは全追跡のうち0.4%にすぎなかったと言うことだ。ただし、カワウの場合はもう少し高かったかもしれず、さらに研究が必要である。
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◆コクチバスの減少はミミヒメウの繁殖数が増加したせいではない(2007.04.05)
五大湖地域ではここ何十年もの間ミミヒメウ(Phalacrocorax auritus)が増えてきており、漁業や遊漁(釣り)への影響が懸念されている。ミシガン湖北部のビーバー諸島はコクチバス(Micropterus dolomieui)の優れた釣り場として知られてきたが、コクチバスの個体数はこの20年間で75-80%も減少したという報告がある。ミミヒメウは確かにこの地域でコクチバスを食べているが、その比率は小さいことから、コクチバスの減少にミミヒメウがどのていど影響しているかははっきりしていない。
ビーバー諸島には2003年にミミヒメウのコロニーが4つあり、うち互いに1.5kmしか離れていない2ヵ所を対象とした。これらのコロニーでは、6月には1,164ペアと615ペア、7月には807ペアと305ペアが数えられた。負傷防止のバネが付いたとらばさみを使って計10個体をコロニーの中心部で捕獲し、電波発信機を装着し、繁殖期から繁殖後まで(6月4日~9月13日)天候が許す限り毎日ボートから探索した。また、コクチバスの生息地となる水域を含む周辺をボートでまわってミミヒメウの群れを探索し、群れの位置と水深を記録した。
発信機個体10羽が採食している位置は131ヵ所プロットできた。これらはビーバー島北東部の水深が急に深くなり、フェリーの航路となっている地域に集中していた。採食中の群れは271回見つかり、平均群れサイズは33羽で、その位置は発信機個体の集中した地域よりやや南であったが、やはり水深が急に深くなっているところであった。これらの採食域はコクチバスの生息域よりも深く、繁殖コロニーからも遠かった一方で、ミシガン湖の主要魚種であるエールワイフ(Alosa pseudoharengus,ニシン科の魚)が多いところと一致した。このことは、この地域ではミミヒメウの餌資源の72%がエールワイフという推定とも一致している。したがって、ミミヒメウとコクチバスがこの魚をめぐって競合している可能性はあるかもしれないが、両者が空間的に分かれていることから、ミミヒメウのコクチバスに対するインパクトは小さいものと考えられる。
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◆ミミヒメウの個体数は「過剰」ではなく回復しただけ(2006.06.07)
北米のミミヒメウは現在しばしば過剰(overabundant)とみなされ、個体数を減らすようにという政治的な圧力にさらされている。そこで、過去の鳥学資料と考古学資料から北米の5つの繁殖ゾーンごとにミミヒメウの個体数と分布を19世紀と現在で比較した。
1970年代以降の繁殖分布は、基本的には19世紀以前の分布と類似していた。(1)アラスカでは現在の分布はかつてより狭いようだ。(2)太平洋地域では、かつては348,840巣(後の再検討では213,500巣)のコロニーがあったほどで、33,000巣ほどの現在よりもはるかに多かったと思われる。(3)内陸部は現在約27万ペアと推定されるもっとも多い地域である。19世紀以前より多いか少ないかは個体数推定の資料が乏しいためはっきりしないものの、現在では観察されないような大群が記録されている。かつてはいなかったと考える人が多い5大湖地域でも確実な繁殖記録がある。(4)メキシコ湾岸地域では現在フロリダ州を中心に約9,400ペアが繁殖しているが、19世紀以前の方が多かったようだ。(5)大西洋地域では現在約87,000ペアが繁殖している。この地域でも、ヨーロッパからの入植者による迫害で減少する以前にはミミヒメウは非常に多い鳥だったようである。
歴史的な資料からは、ミミヒメウは現在よりもヨーロッパ人が入植した頃の方が多かったことがうかがわれる。20世紀中旬に少なかったのは人による迫害や化学物質汚染によるものなので、現在の個体数を「過剰」だとか「歴史的に多い」と表現するのは誤解を招く。鳥類保護地区において森林保護を名目とした大量のミミヒメウ駆除が行われたり、外来種による魚類相の変化等が疑われるにもかかわらず、ミミヒメウの増加が漁獲量の減少の主要な原因とされて駆除されるなど、現在の管理は近代的な保全の考え方と矛盾している。鳥類保全関係者は、人、カワウ、魚類のいずれもが生態系の構成要素であるという認識に基づく管理プログラムを促すよう努力すべきである。
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◆繁殖期のミミヒメウは近くで餌を採っている(2006.06.07)
漁業への影響が懸念されているミミヒメウは、繁殖地や季節によって餌や採食範囲に大きな変異があることが報告されている。この研究では、面積207km2、平均水深6.8mのニューヨーク州オネイダ湖(Oneida Lake)におけるミミヒメウの採食範囲や採食環境選択を明らかにした。
オネイダ湖では2種のパーチ類(walleye, yellow perch)が刺し網で採れる魚の50-93%を占め、ミミヒメウの重要な餌でもある。ミミヒメウは1984年から繁殖し、2000年には湖内の小島で265ペアが繁殖していた。1999年と2000年に計30羽を捕獲して発信機を装着し、76日間の追跡で得られた520地点のうち27羽の224地点が採食地と判断された。採食地と繁殖地の平均距離は2,920m、最大11,200mで、52%は2km以内であった。オネイダ湖以外での採食は記録されなかったが、捕獲後に40kmと80km離れた別の湖へ移動した個体がいた。午前中の方がより遠くまで採食に出かけた。採食距離には雌雄で違いはなかった。採食地点の90%は水深7.5m以下で、湖内の68%に比べて有意に比率が高く、ミミヒメウは浅いところを選んでいた。また、荒石混じりの丸石湖底やシルト・粘土の湖底を好み、泥の湖底を避けていた。個々の個体はしばしば同じ採食地を繰り返し使っていた。
オネイダ湖ではミミヒメウの増加が魚類を減らしていることが報告されているが、本研究ではミミヒメウは繁殖地周辺で採餌し続けていた。これは、捕食対象外だった小さな魚が成長したか湖内での魚類の移動によって繁殖地周辺におけるウによる捕食分が補われたためかもしれない。本研究のように採食環境の選択性を知ることが魚の放流方法の検討に役立つことが期待される。
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◆カワウはイギリスでもマス釣りの大敵!(2006.06.06)
内陸部で越冬するカワウは1980年頃からヨーロッパ全体で急速に増えており、漁業被害への懸念が広がっている。スコットランド中東部にあるリーヴェン湖(Loch Leven)は、世界的に有名なマス釣り場であり、ラムサール条約に登録されている水鳥の重要な越冬地でもある。ここでは1983年からブラウントラウト、1993年からは外来種であるニジマスが放流されている(以下、両方合わせてマス)。
リーヴェン湖のカワウ個体数の年次変動は、前年のマス放流量とスコットランド全域のカワウ個体数の両方に影響されていた。湖内のねぐらへ戻るときに撃ち落とした96羽のカワウのうち82羽が魚を食べており、その85%(重量)がマスであった。カワウの胃内容物には刺し網での捕獲に比べてブラウントラウトが多く、パーチが少なかったが、その違いは大きくなかった。また、魚のサイズや天然魚/放流魚の比率も両者の間で違いはなかった。カワウの性別や年齢によって餌内容が違い、マスの比率はメスよりもオスで、また幼鳥より成鳥で高かった。冬期にカワウに食べられたと推定されるブラウントラウトの数は約8万匹で、漁獲高の10倍以上になる。ニジマスについては約5千匹で、漁獲高の半分未満であった。
リーヴェン湖は海岸から15kmしか離れていないが、カワウの胃から海の魚はまったく検出されなかったことなどから、ここのねぐらに集まるカワウはほとんど湖内で採餌していると考えられる。大きな誤差を伴う推定ではあるが、カワウはブラウントラウトの30%~98%を除去している可能性がある。カワウの増加によって釣りの効率が下がったという証拠は得られていないが、これは放流がカワウの増加を招くとともに釣りの効率低下を和らげているということかもしれない。
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◆急増したミミヒメウはナマズ養殖の大敵[松家大樹](2006.03.09)
ミシシッピデルタはアメリカ一のナマズ養殖地域である。しかし、ミミヒメウの個体数が1980年代に急増し、養殖業者と対立している。この論文では、ミミヒメウ個体数の変遷とナマズ養殖業への影響をまとめ、管理方法を提言する。
かつてはミシシッピデルタで越冬するミミヒメウは少数で、ミシシッピ川沿いに限られていた。しかし、1981~1988年に個体数が急増すると同時に養殖池が多いミシシッピ川東部にまで分布を広げた。1989~1992年の冬季におけるねぐら調査では、高密度養殖地域に12箇所、ミシシッピ川沿いに11箇所が確認されている。個体数は、1988年の約50,000羽をピークに、1990年からは約30,000羽に安定している。1988年に行われた養殖業者281人へのアンケート調査では、漁場での追い払いコストは平均して年間$7,400であった。最も一般的な対策は、池を車で見回って銃で追い払う方法で、60%の養殖業者により行われていた。しかし、実施者の40%は効果を感じていない。
ミミヒメウに捕食されやすい10~20cmの魚は主に3月に導入されている。これをミミヒメウが北へ移動する4月まで遅らせることで食害を減らせるかもしれない。また、ミミヒメウが好むGizzard Shadという(より安価な)魚を導入すればナマズへの捕食が減少するかもしれない。複数のねぐらを一斉に追い払い、ミシシッピ川沿いなどにねぐらを移動させる努力も必要である。
【藤岡コメント:実際に起こった順序としては、ミシシッピデルタでナマズ養殖が急増したので、絶好の餌場を得たミミヒメウが増えたというだと思われる。つまり、ミシシッピ川の環境が悪化したからでも、ミシシッピ川で増えすぎたからでもない。この地域では米国農務省の研究機関が大々的な調査を行っており、相当数の論文が発表されている。】
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◆カワウの捕食による魚類個体群への影響~スイスの場合~[松家 大樹](2005.11.07)
スイスではカワウ(以下、ウ)の数が1970年より約15倍に増加しており、スイスで絶滅危惧種となっているホンカワヒメマス(以下、グレイリング)やサケ科魚類(以下、トラウト)への影響が危惧されている。「ウによるこれらの魚類の捕食は、漁獲量の減少と、過漁獲の場合に見られるような魚類個体群の不安定化を引き起こす」という仮説を、北東スイスの二つの川で検証した。
過去最大30年間にわたる漁獲量、ウの捕食量、捕獲した魚の体長、体重、性別、性成熟度、ウによる傷がついた個体の割合を記録した。漁獲量を魚の個体数の指標とし、ウの捕食量はウ個体数と日消費量、獲物の種別割合の積とした。
ウの捕食とグレイリング・トラウトの漁獲量のあいだに負の相関は見られず、魚の成長率、齢構成、最初の成熟齢にも関係しなかった。ウによるグレイリングの捕食量は、漁獲量に合わせて増減した。漁獲量は年変動が大きかったが、これは主に漁獲の努力量とグレイリングの齢構成によるものだと考えられる。今回のような魚の個体数の多い場所では、魚の個体群に対するウの捕食の影響はなかったが、分断化された小さな個体群においてはどの程度の影響を与えるかは未解明である。
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◆ミミヒメウの春の獲物~サケ若魚降海の影響は?~[松家 大樹](2005.10.27)
米国北東部のニューイングランド地方では、春のアトランティックサーモン(以下、サーモン)の降海期がミミヒメウ(以下、ウ)の繁殖時期と重なるため、ウによるスモルト(降海準備ができた2歳魚)の捕食でサーモンの個体数回復が制限されることが懸念されている。
メイン州ペノブスコット川で1986-1988年(N=580)と1992-1993年(N=200)の4月から6月にかけて捕獲されたウの胃内容物を解析した。3種類の捕獲場所(5つのダム、潮汐上限より上流側、潮汐上限より下流側)と時期ごとに分けて胃内容物を比較した。胃内容物種数は、4月下旬の15種から5月には少なくとも31種と増加した。潮汐上限より上流側で捕獲されたウからは12種の魚類、下流側のウからは21種の魚類が確認された。スモルトについては、4月には確認できず、6月上旬には少しで、それより後には確認されなかった。対照的に、5月中にはスモルトは3種類の捕獲場所すべてで高い出現頻度ないしはランキングを示した。
ウはダム近くで採食していたこと、5月にはスモルトが特に多く捕食されていたこと、河口部では別の獲物(サンドシュリンプ)のランクが高かったことなどは、獲物の個体数の時空間的変動がウの採食地や胃内容の構成に影響していることを示している。ウによるスモルトの捕食は、スモルトの移動と捕食者からの回避を妨げるダムの存在により、より深刻なものとなっている。
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◆ミミヒメウは釣り対象魚をあまり食べていない[松家 大樹](2005.08.17)
米国アーカンソー州のチコット湖は、クラッピー(Crappie)やオオクチバスをスポーツフィッシング用に管理することで商業的に成功している。しかし、ここ10年クラッピーの個体数が減少しており、同時期にミミヒメウ(以下ウ)は増加している。チコット湖で2001年1月~4月と10月~12月に撃ち落としたウの胃内容物と湖にいる魚の種・量について調べた。
胃内容物調査により、418個体から917の餌魚種を同定できた。餌の大きさに性差はなかったが、春・冬に比べ秋は有意に小さかった。ウの餌に釣り対象魚は少なく、大部分が他の魚の餌となる小魚か、餌にすらならない魚であった。季節変化や雌雄差も多少あったが、全体的にGizzard Shad(ニシンの仲間)とYellow Bass(スズキの仲間)が最も多かった。電気ショッカーによる捕獲では、釣り対象魚が、秋には58%、冬には40%、春には76%を占めた。魚種別の順位を胃内容物と利用可能性(捕獲調査の結果)で比べると、ウは、秋にはChannel Catfish(ナマズの仲間)、冬にはGizzard Shad、春にはYellow Bassを選択的に食べていた。クラッピーは胃内容物でも捕獲魚でも少なく、ウによる選択性は判断できなかった。
他の研究と同様に、ウの獲物としては釣り対象魚以外の魚種がもっとも重要なことがわかった。この研究では、ウの餌が性別や季節によって違った。したがって、魚類群集に与えるウの影響を調べるためには、全シーズンにわたったサンプルをとり、ウの性比も考慮すべきである。チコット湖ではクラッピーの減少とウによる捕食を結びつける証拠はなかったが、釣り対象魚以外の魚が少ない水域では釣り対象魚がもっとウに捕食されるかもしれない。
【藤岡コメント:ウの餌がもっぱら小魚だとしても、餌をめぐる競争を通じて釣り対象魚(大型魚)に影響している可能性はある。それにしても、釣り関係者のウに対する反応は日米共通のようだ。】
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◆ウがナマズ養殖池に飛来するかどうかはねぐらの位置次第?[松家 大樹](2005.08.17)
北アメリカ内陸部に生息するミミヒメウは、ここ20年で急増しており、それにともないアメリカナマズの養殖産業への被害が懸念されている。現在、最も効果的な対策は、農務省が養殖業者と協力して実施している広域的なねぐらの追い払いである。この管理をより効果的に行うために、ミミヒメウのねぐらからの動きとナマズ養殖の関係を調べた。
養殖池が急増中のミシシッピ州東部とアラバマ州西部で1998年1月27日~4月15日に調査した。電波発信機をとりつけたミミヒメウ25羽について、日中の位置を週1回セスナ機より定位し、夜間の位置を週2回、19ヵ所のねぐらで確認した。
1羽当たり平均で3ヵ所のねぐらを使い、約20日ごとにねぐらを変えた。ねぐらと日中位置の平均距離は7.9kmで、日中位置の95%はねぐらから19km以内であった。この地域では、さらに南部のミシシッピ州デルタ地域に比べると、ミミヒメウの移動は少なかった。ねぐらによって養殖池あるいは養殖の盛んな地域で発見されたかどうかには大きなばらつきがあったことから、追い払いは養殖池への飛来が多いねぐらだけにし、残りは追い払われた個体の逃げ場としておいておくべきである。ただし、ねぐら利用は動的な過程なので、継続したモニタリングと適応的管理の努力がウによる養殖への被害を減少させる鍵となるだろう。
【藤岡コメント:日中位置を延べ193回、ねぐらを延べ396回押さえており、純粋に研究としてもなかなかの仕事で、さらにそのまま現場で使える指針を示している。それでも、著者も書いているように、ねぐらごとに養殖池を使うかどうかが違うという点については、ねぐらごとのデータが少なく、慎重な判断が必要だろう。】
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