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お わ り に 山 下 清 海
そこで編者としては、執筆していただける方々として、三つのグループを考えてみた。 まずは、華人自身に華人社会を語ってもらうと思った。横浜華僑総会の会長であり、中国料理店や貿易会社を経営されている曽徳深氏、長崎の著名な貿易商社「泰益号」の創業者の4代目で華人社会研究者でもある陳東華氏、および長崎ちゃんぽんの創始者を先祖にもち、中国料理店の経営者である陳優継氏には、それぞれの地域の華人社会の歴史や現状について、体験を交えながら執筆していただいた。また、自らが「新華僑」であり、出版社を経営しながらジャーナリストとしても活躍されている段躍中氏、および大学院時代に編者の指導下で優れた修士論文を書き上げた江衛氏には、日本の華人社会の新しい側面について具体的に論じていただいた。 第二のグループは、常に社会を広く深く見ておられるジャーナリストの方々である。朝日新聞の前シンガポール支局長でイラク戦争にも従軍された野嶋 剛氏には、マレーシアとインドネシアの華人社会について、また同じく朝日新聞の元ニューデリー特派員であった竹内幸史氏には,情報の少ないインドの華人社会についてリポートしていただいた。読売新聞大阪本社の記者の岩井孝夫氏には、神戸南京町と横浜中華街を比較する企画の取材で編者のもとを訪ねて来られたが、今回、その記事を加筆修正の上、掲載していただいた。世界各地の『地球の歩き方』の執筆をされている水野 純氏には、特に長年取材されてこられたタイの華人社会を「ガイド」していただいた。 第三のグループは、華人社会の研究に専門的に取り組んで来られた方々で、それぞれの立場から特定のテーマについて詳説していただいた。なかでも台湾育ちで華人社会の歴史を研究されている許淑眞氏、阪神の華人社会の歴史に詳しい陳来幸氏、陳来幸氏と同じ神戸中華同文学校の卒業生で華人社会の民俗を研究されている曽士才氏、横浜中華街育ちで華人ネットワークの研究をされている陳天璽氏は、いずれも在日の優れた華人研究者である。また、在日コリアンで韓国語・中国語ともに堪能な尹秀一氏には、韓国の華人社会について担当していただいた。 シンガポールの華人会館について研究され現在は香港在住の合田美穂氏には、華人の歴史を平易に説明するという「難題」に取り組んでいただいた。華人経済の専門家として多くの著書を出版されている岩崎育夫氏には華人経済の特色についてまとめていただいた。華人と中国の政治との関係に詳しい田中恭子氏および華人文学・華人教育の専門家である小木裕文氏は、ともに学部長という要職にありながら本書に執筆していただいた。タイ・香港などの潮州人社会、特に宗教組織に詳しい吉原和男氏には、華人の宗教の特色について論じていただいた。 横浜の華人社会の形成史や現状については、横浜華人社会の歴史研究の第一人者である伊藤泉美氏に執筆をお願いした。また、台湾留学の経験もあり高校で地理を教えている齋藤 晃氏には、フィールドワークの場としてみた横浜中華街の景観について論じていただいた。 第三章では、華人社会研究者として各地でフィールドワークを実施しておられる方々を中心に執筆を依頼した。芹澤知広氏はベトナム華人社会の研究に早くから取り組んで来られた。野澤知弘氏は中国で身につけた流暢な中国語を生かして、カンボジアの華人社会に深く入って調査されている。市川 哲氏は若さを生かして、ニューギニアやマレーシアの華人社会を対象に精力的にフィールドワークをされている。華人教育について専門的に研究されてきた杉村美紀氏は、ロンドン・ハノイ・北京などでの生活経験も豊富である。華人社会を都市人類学からアプローチしている大橋健一氏は、本書のフランス華人社会に関する論考を、パリでの在外研究中に執筆された。香港人が多いカナダの華人社会の実情について執筆を依頼する場合、やはり森川眞規雄氏以上の適任者はいなかった。 このように大勢の方々のお力添えで、本書は出版されることになった。それだからこそ、ひとりでも多くの方々に本書を手にとっていただき、本書が華人社会の理解に役立つことを願ってやまない。 「華人社会を知らずして,世界は語れない」とは,決して大袈裟な言い方ではないはずである。 二〇〇五年三月 |